伝わるLINEやツイッターをバズらせたい人のために

【安田】例えば「改行」です。現代の一般向けの文章だと、長くても数百字に1回くらい改行しますし、ウェブ記事だともっと短くて120字ごとくらい。一方、『日本語の作文技術』の本文には、見開き2ページに1回しか改行がない、みたいな文章が普通に出てくる。現代人にはけっこうキツいですね。

——たしかに。安田さん自身は、過去に他にはどんな本を参考にされていましたか。

樋口聡『フリーライターズ・マニュアル』(青弓社)、吉田典史『年収1000万円! 稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)あたりは若いときに参考になりました。比較的近年だと、古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(星海社新書)もよかったですね。

ただ、特に前の2冊はガチで「ライターになりたい人」向けの本です。しかし、いま文章術の本を手に取る一般の人は、おそらく文筆業をやりたいわけじゃない。分かりやすいメールを書きたいとか、伝わるLINEで異性を落としたいとか、ツイッターやnoteをバズらせて有名になったりお金儲けしたりしたい、みたいな人が圧倒的多数でしょう。

本書では改行の大切さも説く。アメブロで開設されている叶姉妹のオフィシャルブログ『ABUNAI SISTERS』の2021年6月20日15:05:19付け記事の文章。「こちらは」「どうか」など、1文どころか1文節で改行するファビュラスな文体で書かれている。

読者の気持ちを考え、「書く目的」を意識する

——本書にも「LINEの短い会話や定型文のメールなんかも含めると、35歳の既婚サラリーマンは年間に新書15冊ぶんの文章を書いている」という話があります。スマホ時代になってから、一般の人が文章を書く機会も量も増えましたね。

【安田】はい。でも、そういう「ガチじゃない」人向けの、本当に役立つ文章術の本はあまりない。インフルエンサーの文章術はいくつかありますが、意識高い系のノウハウって、短期で結果を出す以外の場にはあまり向かない。日本の一般的な社会人が、周囲の人の信頼を得ながら持続可能性を持って豊かになりたい場合は、相性が悪いんです。なので本書を書いたわけです。

——ユニバーサル文章術でいちばん重要なことは「読者の気持ち」を考える(=受け手の立場を想像して書く)とありました。言い換えるとどういうことでしょうか。

あらゆる文章に言えることですが、「書く目的」を意識して、目的を達成するために最適化された文章を書くことです。例えば学術論文なら、研究の内容を論証することや、学位を取ること、業績を増やすことなどが「目的」。メールなら、ビジネス情報を誤解なく簡潔に伝達すること、場合によっては相手と信頼関係を醸成することなどが「目的」となる。婚活アプリで異性に送るメッセージなら、もちろん、会えるようになること、交際に発展させることが「目的」です。