使命感を持つとやる気の次元が変わる
【宮口】それで、病院に来ない非行少年たちはどうなっているのかを調べたところ、一部は医療少年院という施設に入っていることがわかりました。その実態を知りたくて医療少年院に勤めるようになりました。
そこで、簡単な図形の模写ができないなど、認知機能の低い少年たちに出会いました。「丸いケーキを3等分するには、どう切ればいいですか?」と問われて、ベンツのマークのように扇形に切り分けず、まず縦に半分に切ってしまうような少年たちです。私は衝撃を受け、彼らが非行に走ったのも、一因に認知機能に問題があって授業を理解することができず、学校に嫌気がさしたからではないかと考えるようになりました。
このときに、スイッチが入っちゃったんですね。「認知機能に障害があるのに気づかれずに非行化する子どもたちが、予備軍も含めてたくさんいる。この子たちを何とかしなくちゃいけない。そのために自分は生まれてきたんだ」という使命感が湧いてきたのです。使命感を持った瞬間、「やる気」の次元がぐっと上がった気がします。
【養老】コーリング――呼ばれたんですね(英語の“calling”には「天職」という意味がある)。
【宮口】ああ、そうかもしれません。使命感のようなものが見つかった私は、ある意味ですごく幸せだと思います。
【養老】見つからないのが普通でしょうね。宮口先生にとっていまの仕事は、天職なんだと思います。