政府案に隠された“トリック”の疑惑

しかも、そこにある種の“トリック”が隠されている可能性さえある。と言うのは、今の皇室典範では禁じられている「養子」という形で皇族の身分を取得し、「男子」なのに皇位継承資格を持たないという特殊な扱いなのに、結果的に「皇族男子」という“括り”になると、皇族男子との婚姻で国民女性が皇族になる規定(皇室典範15条)が適用されて、その配偶者は皇族になる。そうすると養子のお子様は「皇族の夫婦から生まれた子」に当てはまるから皇族となり、男子ならば皇位継承資格を持つという帰結になる。

「現行の皇室典範」のルールを変更せずに適用できるので、報告書ではことさら言及する必要がなかったと言い張れば、アンフェアだがそのまま通りかねない。

しかし、そのような制度設計ならば、なぜ、野田氏の質問に最後まで異常なほどはぐらかし続けたのか。

制度化される“前”にそのことが明らかになるのは、まずいと判断したのだろうか。何しろ、女性皇族の場合は(皇族として生まれながら“女性だから”という理由だけで)その配偶者と子は国民のままなのに、国民男性が養子になった場合は(養子縁組の前は国民でも“男性だから”)配偶者も子も皇族となり、その子が「男子」ならば皇位継承資格も認められるという、令和の制度と思えない旧時代的な「男尊女卑」ぶりが丸わかりになってしまう。そうすると、国民の間に広く違和感や反発を生み出しかねないからだ(対象となる女性皇族方もご不快ではないか)。

しかし、もし上記の想定が当たっていたとしたら、制度の全容を国民(および当事者)に隠したまま制度化するというやり方は、およそ「国民統合の象徴」であるべき天皇・皇室を巡る制度改正にはふさわしくない。皇室への国民の素直な敬愛の気持ち(および女性皇族方の使命感や責任感)を損ないかねないだろう。

今後、国会の真剣な取り組みと、それを後押しする国民の注視が欠かせない。

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