がん診断給付金100万円は引く必要なし

がん治療のための費用として、1年間で合計45万円かかり、健康保険から高額療養費20万円、生命保険から給付金20万円とがん診断給付金100万円を受け取ったとします。医療費のうち30万円は手術代を含む入院中の費用、15万円は退院後に外来で放射線治療を25回受けたときの合計額です。外来治療費は、1カ月当たりの医療費が高額療養費の限度額に達しなかったため、補塡される金額はありません。

受け取った高額療養費20万円と給付金20万円は、入院・手術の費用30万円からのみ差し引きます。支払った金額より受け取った金額の方が大きいので、入院・手術の費用は「0円」となり、記載する必要はありません。

がん診断給付金100万円は、「初めてがんと診断確定されたとき」に支払われますので、「給付の目的となった医療費」というものはありません。したがって、「生命保険などで補塡される金額」に記載する必要はありません。

もし、支払った医療費合計額から受け取った金額の合計額を引いてしまいますと、「45万円-140万円」となり、受け取った金額のほうが多いので医療費控除は使えなくなります。仮にがん診断給付金を引かなかったとしても「45万円-40万円=5万円」となり、10万円を超えないため、やはり医療費控除は使えません(所得200万円以上の場合)。

医療費控除額=(30万円-30万円(※1))+15万円(※2)-10万円=5万円

(※1)給付合計額は40万円だが、差し引くのは支払った医療費まで。入院・手術に関する医療費支払いはゼロとなるため、明細書への記載は不要。
(※2)外来治療費15万円は補塡される金額がないため、そのままの金額を記載。

写真=iStock.com/South_agency
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受け取った金額が医療費以上のときは記載しない

3つのケースで示したように、支払った医療費合計額と受け取った給付金等の合計額を機械的に計算式にあてはめてしまうと、思わぬ落とし穴が待っている可能性があります。以下に書き方の留意点をまとめます。

・医療費通知から明細書の1に記入する場合、医療費の中身をよく確認して、それに対応する給付金と突き合わせることが大切です。もし給付の根拠となった医療費よりも給付金のほうが多い場合、1の(2)(3)に記入する金額には含めません。
・領収書から明細書の2に記入する場合も同様に、かかった医療費の額(4)と、それに対応する給付金等を医療費の額を限度に記入します(5)。仮に医療費と同額以上の給付金等があれば、支払った医療費はゼロ(マイナスにはならない)なので、医療費、給付金ともに記載する必要はありません。
・明細書2には、「領収書1枚ごとではなく、患者ごと、病院等ごとにまとめて記入できる」との説明がありますが、給付金等がある場合、差し引くのは給付の目的となった医療費が限度であることに注意をしながら記入してください。
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