生と学問に固執する濃い情念

こうした彼の生活に、女性との時間が入り込む余地はありませんでした。“予定外”が増えそうなことは、あらかじめ避けたのです。

長山靖生『独身偉人伝』(新潮新書)

晩年には歯が弱くなり肉を噛み難くなりましたが、滋養のために肉料理を摂るよう努め、煮込んでスープにしたり、噛めない場合は肉汁だけすすったそうで、そうなるとテーブルマナーは犠牲になりました。形より実を取るのがカントです。

それでも規則正しい生活を守り、思索を続けたカントは、年が改まると早々に町役場に行き、前年の死亡者を確認する習慣がありました。自分より長生きしている人数を確認し、今年も頑張ろうと意欲を掻き立てるためでした。

静かで規則的な彼の人生にも、生と学問に固執する濃い情念が立ち込めていたのです。

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