FRBは12月15日の会合でテーパリングのペースを倍増すると決定し、2022年の利上げ見通しを前回の1回から3回に引き上げた。英中央銀行も12月16日に予想外の利上げを行い、世界の中央銀行はインフレ対応に舵を切り始めた。
もし、世界の中央銀行の利上げ競争から日銀が取り残されれば、他国通貨との金利差拡大で大幅円安が起こり、輸入インフレが生じる。輸入物価が円安で上昇し、それと競合する本邦製品の値段も引き上がる。輸入原材料が値上がりすれば完成品価格も上昇することもある。
このように日本でもインフレが始まった時、日銀が政策金利を引き上げれば、日銀は債務超過になってしまう。引き締めなければ「インフレ加速しているのに日銀は何している」との怨嗟の声が泣きあがり、日銀はピンチになる。
それ以上に物価上昇が止まらないことが大問題となる。いずれにしても海外の中央銀行がこぞって利上げするようになれば日銀は大ピンチである。
仮に日銀が債務超過に陥ると、私たちの生活は……
日銀が債務超過すると日本経済はどうなるのか。まずは円の信用が失墜する。外資はG7の国であろうと政府も中央銀行も倒産するという前提のもとで取引額の上限を決めている。過剰な損失を防ぐためだ。
日銀も債務超過になれば、外資は急速に取引枠を縮小し最終的には日銀当座預金を閉鎖するだろう(もっとも財務が健全な新しい中央銀行が出来れば再開する)。「某民間銀行が危ない」というニュースが流れれば、皆さんが急いで銀行に駆け付け、預金を引き降ろす(=取り付け騒ぎ)のと同じだ。相手が中央銀行でもそれは同じ。
日銀当座預金口座は円に係るすべての銀行間取引において必要不可欠な勘定であり、外資がこの口座を閉鎖するとなれば日本人は円を売ってドルを購入する手段が無くなる。円が世界のローカル通貨化するということだ。
ドルとの互換性の無くなったローカル通貨は紙くずや石ころと同様の存在だ。いくらモノやサービスが供給過剰でも、石ころでは売り手はモノを売ってくれない。それがハイパーインフレである。
ドルと暗号資産を持っている人はマシ
では日本社会はどうなるか。ここまでは金融の話だから私の専門の範疇だが、これ以降は私の専門の範囲を超える。政治もかかわってくるから、これからの話は頭の体操にしか過ぎないことはご了承いただきたい。
政府は1兆4057億ドル(約160兆円)ある外貨準備(ほとんどがドル)を使って、原油、外国製農産物、高額薬品等を確保し、国民の生存を図るだろう。
餓死しない程度の最低限の生活は出来そうだ。ドルや暗号資産を買って、それなりに準備をしてきた人は多少はマシな生活を送ることができるだろう。