ウォルトお気に入りのアイデアも軒並み酷評

だが、「ディズニーランドはうまくいかないだろう」というのが、満場一致の反応だった。プライスは、否定的な意見(肯定的な意見はひとつもなかったのだが)を詳細に書き残している。

「収入源になるはずのものが、明らかに足りない。ジェットコースターも、観覧車も、射的もなければ、玉当てのようなカーニバル・ゲームもない」。しまいには、ディズニーランドには必要ないと考えているものを指摘される。「余興を売り込む客引きを置かないなら、カモたちは金を払ってまでショーを見ない」

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また、「乗り物の収容定員が少なすぎて、収益が得られない」だけでなく、そもそも「独自の乗り物ではうまくいくはずがない」という。建設に費用がかかりすぎるし、故障しやすいからだ。「それに、客たちは違いもわからないし、気にしないだろう」

ウォルトお気に入りのアイデアも、一蹴されてしまう。「城や海賊船のようなものは、見ばえはするだろうが、所詮乗り物ではなく、経済的に考えるとつくる意味がない」し、メインストリートも「収益をあげないものばかりが並んでいる」というのだ。入口がひとつしかないのも致命的だと言われた。「大渋滞を引き起こすだろう。駐車場から近く、アクセスがしやすいよう、入口はすべての方角に設けるべきだ」

『白雪姫』も同じくらい悲観的な批評を浴びていた

ジャングルクルーズは特に評判が悪かった。「動物が眠ってしまい、ほとんど客には見えない」。しまいには、こう言われた。「清潔で眺めのいい景観を維持するというこだわりは、経済的には自殺行為だ。客が気づきもしないようなものに金を使いすぎて、ウォルトは無一文になるだろう」

4人のうちのひとりは、プライスにこんなアドバイスを残している。「ウォルトに、金の無駄遣いをやめるように言うんだ。今まで通りの仕事に精を出して、遊園地ビジネスはビジネスをわかっている人間に任せておくんだとね」

酷評を並べられても、ウォルトは驚きもしなかった。

お客のことを「カモ」などと呼ぶやからに、自分の思いが理解できるはずがない、と。『白雪姫』をつくったときも、ウォルトは同じくらい悲観的な批評に耐えた。そして、その『白雪姫』があるからこそ、スタッフたちをその気にさせられるのだった。