文化部にみる私立校と公立校の差

部活動もまた特別活動と同じく理念的には祝祭的な存在であって然るべきであろう。何が部活動の喜びと学びを損なっているのだろうか。活動格差・名誉格差・安全格差という3つの観点から検討していきたい。

部活動をめぐる第1の格差は活動の質や量にある。

前述のスポーツ庁委託調査によると、「運動部/文化部」別に見た所属率は、中学校では「運動部71.6%、文化部20.3%」であり、文化部の選択肢が吹奏楽のみの学校も少なからずある。

高校では「運動部54.5%、文化部28.1%」となり、写真部(中0.0%、高1.3%)や軽音楽部(中0.1%、高1.8%)など文化部の選択肢が増加する傾向にあるものの、それでも運動部が文化部と比べて圧倒的なマジョリティであることには変わりない(東京書籍2018:96~99)(図表1)。

部活動の選択肢をめぐっては「私立/公立」間の格差も著しい。例えば中学校の文化部の所属率は公立19.5%に対して私立では29.3%と10ポイントも高い。

さらに公立中学校では文化部に所属する生徒の約7割が吹奏楽部(46.7%)か美術部(工芸含、21.3%)のどちらかに所属しているのに対し、私立中学では両部の所属率の合計は18.9%に過ぎず、将棋部(対公立比15.6倍)、軽音楽部(同13.6倍)、漫画アニメ部(同11.7倍)、マーチングバンド部(バトントワリング含む、同11.7倍)など、生徒のニーズに合わせた多様な活動が行われている(東京書籍2018:96~99)。

家庭の経済状況によって部活の活動時間が異なる

部活動をめぐっては活動時間の格差も著しい。

ここ数年、全国の自治体で部活休養日の設定や朝練禁止などの取り組みが進められており活動時間は全体的に減少傾向にあるが、自治体による差が大きく、2019年度の中学2年生の1週間あたりの部活動時間数を都道府県別に性別単純平均で見ると、最長の福岡県では16.1時間、最短の岐阜県では9.8時間となっている(スポーツ庁2019)。

また、公立中学校の部活顧問を対象とした全国規模の調査分析では、1週あたりの平均部活動時間が学校の所在地の地域SES(社会経済的地位=Socioeconomic status)によって異なるという結果が示されている。

具体的には、高SES地域が14.0時間であるのに対し、中SES地域は14.6時間、低SES地域では13.4時間となっていた。

直近3年間の全国大会出場経験についても、高SES地域が7.7%であるのに対し、中SES地域は8.8%、低SES地域は6.5%となっている(内田編2021:161~162)。