社会から置き去りにされている犯罪加害者の子どもたち

――夫の逮捕後、幼い子どもはどうなったのでしょうか?

そこが男性の家族がもっとも懸念した点です。男性の家族はマスコミに追われ、これまでのような生活はできないだろうと考え、殺害された妻の実家に子どもを預けることにしました。

――夫婦間の殺人事件の場合、子どもの立場は複雑ですね。両親が被害者と加害者になるわけですから。

親が逮捕された子どものサポートは大きな問題です。岩手の事件では、母親の家族に引き取られましたが、引き取り手がいない場合は児童養護施設に入所します。犯罪加害者の子どもたちの受けた精神的なダメージを、どのように回復していけばいいのか。まだ調査はされておらず、十分なサポートを受けられない状況です。

世間が子どもに罪を背負わせてしまっている

――それでも阿部さんたちの活動を通じて、犯罪加害者家族に対する理解は、少しずつ広がっているように思います。

阿部恭子『家族間殺人』(幻冬舎新書)

加害者家族を題材にした小説やドラマ、映画が増えたのは、大きな進展だと思います。東野圭吾さんの小説『手紙』や、東元俊哉さんの漫画『テセウスの船』、内藤瑛亮監督の映画『許された子どもたち』では、私たちの経験も作品に活かされています。

犯罪加害者の子どもだからという理由でいじめられたり、学校に通えなくなったりしたという話はよく聞きます。しかし、罪を犯したのは親であり、子どもに罪はありません。

世間が見て見ぬふりをすることで、いまだに多くの犯罪加害者の子どもたちは放置されています。それでは子どもに罪を背負わせているのと一緒です。世代間連鎖を断ち切り、将来の犯罪を防ぐためにも、目の細かいセーフティーネットを構築していく必要があります。その一歩として、犯罪加害者家族の存在を知り、苦しみを想像してみてほしいんです。

(聞き手・構成=山川徹)
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