解決策に動き出したのは最前線の現場だけ
そこはコロナ禍の中、新規オープンした店舗だった。予算を組み替えてまで導入した「最も強力な換気システム」が動き出し、彼らは夜の営業に備える。原因がなんであれ、ここでクラスターが発生すれば、歌舞伎町を取り上げるメディアは、店舗側の努力などお構いなしに、「夜の街」でどんちゃん騒ぎをする「けしからん」ホストを写真に収め、大々的に報じていくだろう。多くのメディアは「最悪」の例に目を向けるが、最良の成果や実践には目を向けない。
手塚はホスト業界、もっと広く言えば歌舞伎町という街全体が「社会のセーフティーネット」として機能してきたと言っていた。どこにも居場所がない「やんちゃな子どもがそのまま大人になったような」人々や家族と縁が切れてしまった人々であっても、一人の人間として受け入れる。そんな街を社会の恵まれた人々は「感染を広げて迷惑」とバッシングするばかりで、現実的な解決策に動き出したのは、最前線の現場だけだった。(『ゲンロン12』へつづく)
※「『家に居ろ』が通用しない。新型コロナに悩む歌舞伎町の現実」、「Forbes Japan」、2020年4月28日。