業務の簡略化が進んでいるのに研修をする不思議

ところで、各地銀は、業績不振のなかにあり、店舗の統廃合や人員削減もおこなっていることは繰り返し述べてきた。それにもかかわらず、なぜ、このような豪華研修施設を新設してまで、研修をおこなうことが必要なのだろうか。

自前の豪華研修施設での缶詰研修ではなく、取引のある地元の老舗ホテルや旅館を借り切っておこなうとか、他県にある業務提携先の地銀の取引先ホテルや施設を利用して研修するとかしたほうが、有意義な機会になりそうだが支障があるのだろうか。

銀行員といえば、研修、研修また研修。立派な設備も完備でそれ研修──。銀行業務とは、そんなに複雑かつ難解なのだろうか。

デジタル化や自動化に外注化で、むしろ行員の業務は簡略化されているはずなのに不思議な話だ。または、銀行員は、そんなにも覚えが悪いのだろうか。余計なお世話だが、研修や勉強で得た知識を実践で活かす前に、異動、定年または退職とならないことを願うばかりだ。

費用対効果やコスト面に意識が向いていない

当たり前だが、何でもかんでも研修すればいい訳ではない。本人のやる気も、適性もある。そもそも練習と実践はまったく違う。どんなに豪華研修施設で座学研修をし、資格を取得したり、ロールプレイングで研修したりしても、実務や実践で役に立つとは限らない。

高橋克英『地銀消滅』(平凡社新書)

人事部や営業推進部など、本部主導による過剰な受け身研修や勉強会で均質化された銀行員が、百戦錬磨の企業経営者の貸出ニーズ、金融リテラシーの高い富裕層や資産形成層の運用ニーズに対して、どれほど機敏に対応できるのだろうか。はなはだ疑問である。

地銀は、上場する株式会社であるにもかかわらず、研修施設や研修制度の導入が費用対効果やコストの面から語られることもない。ここでも収益目線がないのである。

研修という名の「お勉強ごっこ」ばかりで自己満足してしまい、稼ぐ力が伴わず、業績にほとんど反映できていないといったら、少し言い過ぎだろうか。

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