IOCも中国も北京五輪が危ぶまれることは避けたい

女子プロテニスを統括する女子テニス協会(WTA)は11月14日、問題の投稿に対して「深い懸念」を示し、中国政府に真相を調査するよう求める声明を発表した。アメリカ政府や国連人権高等弁務官事務所も彭さんの安全に関し、懸念を表明した。

IOCも最古参の委員が来年2月の北京冬季五輪開催について言及し、「人権の問題であり、すぐに良識的なやり方で解決しなければならない。IOCが厳しい態度を取る可能性がある」と語った。だが、その後IOCは、バッハ会長がテレビ電話で彭さんと会話し、「健康で安全だ」と発表した。

IOCも中国政府も、北京冬季五輪開催が危ぶまれるような事態はなんとしても回避したい。IOCは五輪でカネを稼ぎ、中国は五輪で世界に権威を示そうと考えている。両者の利害は一致している。IOCは中国に協力して火消しに動いたのだろう。実際、テレビ電話には中国のIOC委員も参加していた。彭さんがどこまで自分の気持ちを伝えていたかはかなり怪しい。

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「IOCは中国政府との共通の利益を重視している」

アメリカ国務省のネッド・プライス報道官は11月22日の記者会見で「彭さんについて注目している。(テレビ電話での)彭さんの言葉が強制されたものかどうかは現時点で確信できない」と述べた。下院外交委員会の共和党トップのマイケル・マコール議員はこの日IOCを批判する声明を出し、「IOCは中国共産党による彭さんの虐待に加担した。選手を守ることよりも中国政府との共通の利益を重視している」と訴えた。

こうした批判に対し、中国外務省の趙立堅(ジャオ・リージエン)副報道局長は23日の定例記者会見の中で「悪意のある騒ぎ方は止めてもらいたい。今回の騒動を政治問題化してはならない」と強調した。

今回の騒動には「中国内部の権力闘争」との見方もある。習近平国家主席が自らの権力を固めるために李克強(リー・クォーチャン)首相の排除に動いており、李氏との関係が強い張高麗氏が標的となり、彭さんとの不倫関係を利用されたというものだ。しかし、辻褄の合わないこともあり、真相はやぶの中だ。