いずれにせよ、緑の党にとっての最大の問題は、連立が固まり、共同施政方針が発表された時、そのエネルギー政策が、これまで地球環境のためという大義名分で主張してきた内容と違いすぎると、信用が地に落ちることだ。今でもすでに、「全国のアウトバーンの制限速度を130kmにする」という公約を死守できないらしいということで、非難に晒されているくらいだ。つまり、緑の党は現在、飼い犬に手を噛まれるかもしれないという大いなるジレンマに陥っていると予想される。
しかし、さまざまな環境グループと手を組んで「気候危機説」を盛り上げたのは緑の党だけではない。多くの勢力が利用価値があると思って育てた子供たちが、今や力を持ち過ぎてしまった。人類滅亡に怯え、被害妄想にとらわれた彼らにブレーキをかけるのは至難の技だろう。
産業先進国であるはずが…
なお、やはり気候危機を煽り続けてきたドイツの主要メディアは、まだ今後の方針を決めかねているように感じる。COP26の「成果文書採択」については、中国とインドの反対によって文書の内容が薄められたことについての憤りや落胆を表す書き方が多かった。また、プーチン大統領は悪者で、バイデン大統領は希望の星というのも今なお変わっていない。
ただ、彼らの喫緊の悩みは、新政権がこれまでのエネルギー政策を、自民党の意見に沿って転換した場合、それを支持したものか、叩いたものかというところだろう。独メディアは自民党が嫌いだ。ただ、それに固執して停電になるのは、もちろん困る。
それにしても、産業先進国ドイツが、なぜ、ここまで不完全なエネルギー政策を放置しておいたのか。責められるべきは16年も続いたメルケル政権のはずだが、それがなぜか一切論じられないのがドイツの不思議である。