「前はこうだった」と蒸し返さない

また「今の状況」を伝えるときに気を付けたいのは、今回の状況以外のことを持ち出さないこと。「そういえば、前に来たときは床が汚れていた」など、勢い余って以前のことまで蒸し返すのはやめましょう。それはその当時に言うべきこと。昔のことを言っても仕方がありませんし、ものごとが悪い方向に進んでいくだけです。今の状況だけを伝えましょう。

「他の店ではこうしてくれた」と他を引き合いに出すのもよくありません。今はサービス戦争で、顧客に過剰サービスを期待させる世の中なのも問題ですが、他の店の話を持ち出すときりがありません。

そして「自分の期待」「自分の今の感情」を伝えるときは、「私はこう思う」「私はこう感じた」と主語を「私」にしましょう。「あなた」を主語にすると、「あなたはどういう神経をしているんですか」「あなたは気づかないんですか」となり、これまた品のないクレームになります。また「ほかのみんなもこう思ってます」というのも、ずるい言い方。「ほかのみんな」とは誰なのかはっきりしませんし、自分の考えに対して自信がないことが相手に伝わってしまいます。自分の意見を伝えることが大切です。

ステップ4:自分の望みを率直に伝える

自分がどうしてほしいか、具体的に相手に伝えるのが最後のステップです。たとえば「新しい皿に盛りつけてほしい」でもいいですし、「一言謝ってほしい」でもいいでしょう。「誠意を見せてほしい」といった言い方は、何を求めているのかがあいまいでわかりにくいので良くありません。相手を困らせるだけの、良くないクレームになります。

ゴールを見失うと単なる「ややこしい客」に

この4つのステップのゴールは、自分の望みを的確に相手に伝えることにあります。「自分が正しくて相手が間違っていることを認めさせる」「何とかギャフンと言わせてやりたい」といったことがゴールになってしまうと、店側からすると、ただのややこしい客です。まさに悪いクレーマー、カスハラになってしまいます。途中でゴールを見失わないように気をつけましょう。

この4つのステップを踏めば、クレーマーやモンペ扱いをされる可能性は低くなり、こちらの要求は通りやすくなるはずですが、最終的に要求が通るかどうかはやはりわかりません。だからこそ大切なのは、こちらの柔軟性です。自分の期待通りにいかなくても、それはそれとして、お互いに歩み寄っていく。柔軟性を身につけていれば、そもそもの怒りやイライラも減っていくはずです。

(構成=池田 純子)
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