ベンチャー企業が「求めない」人材

これはあるベンチャー企業の人から聞いた話ですが、大企業から転職してきた人が、翌日のプレゼン資料が完成していないのにもかかわらず「定時だから」と帰ってしまったそう。

大企業と違い、ベンチャーでは一つひとつのプレゼンが会社の業績に直結します。いわば生き残りを懸けた大勝負なのに、その人は大企業にいた経験から「定時に帰るのは自分の権利」と考えて、それを会社の成長より優先させたわけです。帰ってしまったら他の誰かが穴埋めせざるを得ないのに、です。

守備範囲を広げたくて転職してきたはずの人が、実際にそうした仕事を振られて「それは無理です」「私の仕事じゃありません」と言って断ったといった話も耳にします。そうした人は社員の間で、あきらめの気持ちを込めて「あの人は大手から来たからね」と言われているそうです。

悪い例ばかりを挙げてきましたが、「新しい挑戦をしたい」「自分の可能性を広げたい」と思うことはとてもいいことだと思います。ただ、転職は、その言葉が意味する現実をしっかり理解した上で臨むべきです。

挑戦したり可能性を広げたりするためには、それこそ残業しなくてはならないときもあります。「挑戦はしたいけど定時に帰りたい」「可能性は広げたいけど仕事は決められた守備範囲内でやりたい」──。そうした思いが少しでもあるのなら、転職するよりも、今の会社で成長できる道を模索したほうがいいのではないでしょうか。

ベンチャー企業は、新規事業に取り組む人たちの集団です。そのため、採用するなら自社の事業に思い入れの強い人をと考えているでしょう。選考で応募者を見るときは、そうした意欲や能力、チャレンジ精神などを重視するはずです。

ですから、その逆のタイプ、つまり新しい環境を不安がるような人や、入社前から社風や働き方を心配しすぎるような人は敬遠されるのではないかと思います。

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