番組をつくるのは熱い血の通った人間
頼もしいなと思うのは、最近になって自主的なコラボレーションが生まれてきたことです。たとえば大河ドラマ『篤姫』の制作チームと教育テレビの番組『おしゃれ工房』のチームが協力し合って、『江戸の女性 きれいを磨く!』という新しい番組をつくりました。
また、報道局の政治部と社会部と経済部が人を出し合い、09年4月から『あすの日本』という番組がスタートしました。これも私がつくれと命じたわけではなく、現場が自主的に動いて実現した企画です。
いま、私がNHKの職員たちに言っているのは「誇りを持って仕事をしてほしい」ということです。「君たちはずっとNHKにいるからわからないだろうが」と前置きして、次のような話を聞かせるのです。
会長を引き受けたとき、古くからの友人は口をそろえてこう言いました。
「福地君、おめでとう。難しい仕事を引き受けてご苦労さんだな。俺、いまNHKの放送しか観ていないんだよ。いい番組をつくっているよな」
前段はともかく(笑)、後段のところで放送品質をほめてもらったことに私はものすごく誇りを感じました。「アサヒビールの社員はいいけど、スーパードライはまずいよな」といわれたら、これはたまりません。
放送品質について高い評価を得たということは、NHKで働くようになってからきわめて大きな励みになりました。
テレビやラジオの番組というものは、どのような高度技術社会になってもロボットにつくらせることはできません。ロボットが『坂の上の雲』をつくれるわけはないですし、誰かのもとへ取材に行くことはできません。