一つだけ、頼みごとをする

ことが起こり始めたら、できるだけ早く(早いほうが傷が少ない)、あっさりと「お母さん、お願い、今は放っておいて」と言えばいい。「静かにしていたいから」「仕事(勉強)に専念したいから」「考え事をしたいから」

本当の理由は、「母親の相手をする時間(気力)がない」「母親の顔を見ると気が滅入る」なんだけど、原因まで正直に言う必要はない。放っておいてほしい気持ちだけを正直に、理由はあくまでも「ほかに専念したいことがあって、残念ながら」を装ってあげてね。

そして、一つだけ、頼みごとをするといい。「明日の朝、モーニングコールかけてくれる?」「母さんの味噌汁が飲みたいな。それだけお願い」「スポーツドリンク、買ってきてくれる? 悪いけど、それだけお願い」

世話をしたい! これは、長く生きてきた女たちの本能であり、悲願なのである。お腹のすいた子が「食べたい!」と腹の底から思うように、アスリートが「勝ちたい!」と腹の底から思うように、母たちも「世話したい!」と腹の底から思う。

うざいのはわかるが、一つだけ「餌」を投げてほしい。しかも、それが母親の得意技(「母さんの味噌汁」「母さんのおかゆ」「母さんのアイロン」)なら、なおいい。母親の満足度が高くなる。

つわりや病み上がりに、母や姑が押しかけて来るのなら、「来ないで」と言うよりは、「一つだけ、頼みごと」をして退散させるほうが楽だ。「来ないで」と言ってしまうと、心配する電話やメールの回数が増えるので、これも厄介だから。

息子の嫁がかわいくて、かまい倒していた

姑の場合は、夫から言ってもらうといい。

娘がいない私は、とにかくおよめちゃんがかわいくて、当初はかまい倒してしまったらしい(あまり自覚がないのだけど)。およめちゃんが、私が愛してやまない社交ダンスにはまってくれたのも一因で、ドレスも靴も買ってあげたい、パーティにも連れまわしたい、と盛り上がっちゃったのである。

写真=iStock.com/sportpoint
※写真はイメージです

一緒にドレスを選んで、お化粧の算段をして(「あいちゃん、このドレスに、このアイシャドウはどう?」「アイライナーはもっと黒いほうがいいよ、お母さん」とか)、連れ立ってパーティに行けば、若くて美人なおよめちゃんは華やかに目立つ。お揃いのドレスなんか着た日には、みんなに羨ましがってもらえたし。

なにより、ダンスの才能がずば抜けていた。これに、およめちゃんの高校時代からの親友も加わって(彼女がまたダンスの才能が素晴らしい)、我が家は一気に華やいだ。娘たちのかわいいこと、かわいいこと。息子もかわいくてたまらないけど、娘のそれはまた別である。

あるとき、娘のいる友人が「娘もかわいいけど、嫁もかわいい。そのかわいさはまた別なの。愛してやまない息子を愛してくれる人、同志感というのかしら、それがある」と語ったが、私も、およめちゃんにそれを感じる。