「同じ墓に入りたくない」と義妹に言われお墓に入れない独身女性
いくつか具体的な事例を紹介しよう。あくまでも架空のケースであるが、類似のケースはしょっちゅうある。
【ケース1】両親を亡くした姉・山田A子さん(独身)と、弟・山田B夫(結婚して妻C美さんと子供がいる)さん。この場合、A子さんが山田家の墓を継承し、自身もその墓に入ることは可能である。だが、永続的に山田家の墓を護持していくには子供がいるB夫さんのほうが都合がよい。必然的に山田家の墓の継承者はB夫さんになり、B夫さんの死後はその妻や子供、孫へと引き継がれていく。
この時、A子さんとC美さん、あるいはA子さんからみて甥や姪との関係性が良好であれば、独身のA子さんは山田家の墓に入ることも可能だ。しかし、C美さんは、「A子さんは義理の姉で血のつながりがなく、同じ墓に入りたくない」という。結果的に、A子さんのほうが遠慮をし、独自に永代供養を探すことになる。
また、次のような例もよくあるケースだ。
【ケース2】鈴木D蔵さんには、2女1男(長女E子さん=結婚して子供がふたり、次女F子さん=バツイチで息子がひとり、長男G男さん=結婚して子供がひとり)がいる。この場合もやはり、長男であるG男さんが墓を継承することが多い。まず、E子さんは鈴木家の墓は継承しないのがほとんどだ。夫の家の墓に入るからだ。
F子さんには元夫がいる。しかし、元夫に後妻がいない限りは、元夫のほうの一族墓をふたりの子供のどちらかが面倒をみなければならない、などのややこしいことが考えられる。子供にとっては母と別れた父親方と、母親方の両方の墓に関わることになる。2つの両親筋のお墓を管理していくことはコストもかかる。結局、シンプルに墓地継承を考えた場合、G男さんが継承するのが最も現実的、ということになる。
墓問題は、男の目線ではあまり気づくことがないが、多くの女性にとっては心配事だ。これは、日本国中のありふれた問題なのだ。その根底には、江戸時代から継承されてきた檀家制度、血統を守ろうとする潜在的意識、ムラ社会の慣習、女性への差別的な見方などがある。
そうした中で、おひとりさま専用の永代供養個人墓の需要が伸びている。