1898年に始まった墓制度が令和時代の今も実質続いている
墓制度の始まりは、1898(明治31)年に施行した旧民法で「系譜、祭祀及び墳墓の所有権は家督相続の特権に属す」と規定されたことによる。旧民法下では、家督相続人(一般的には長男)が墓を含む全財産を単独で相続していた。
それが、戦後の民法で、きょうだい・性別を問わず平等に相続できることになったのが、財産および祭祀継承権だ。たとえば、両親が亡くなった時、財産相続は原則、兄弟均等割である。
では、墓や仏壇はどうか。これら祭祀にかかる財産は、きょうだい間で二分割、三分割して相続、管理することは物理的に不可能だ。では、誰が祭祀継承権を相続すればよいのか。
民法では第897条にこう規定されている。
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承する」という条文がポイントである。慣習とは、地域における葬送文化や、先祖から受け継がれてきた伝統のことである。つまり、祭祀継承にかんしては、現在にいたるまで、事実上「長男が慣習に従って相続してきている」のである。実態としては戦前の祭祀継承のかたちと、なんら変わらないのである。
祭祀継承権を得た長男やその妻や子供は一族の墓に入ることができる。同時に、墓の管理料や法事にかかる費用などを負担することにもなる。
法律上、墓や仏壇は、きょうだいの誰でも婚姻の有無は関係なく継承できることになっているにもかかわらず。あるいは叔父や叔母、甥や姪、もっといえば、血のつながっていない知人関係でも一族の墓を継承することが、可能であるはずなのに。
しかも、単身女性は祭祀継承者になりにくいのに、単身男性の場合はなぜか一族の墓に入れるパターンが多いのも不思議である。