「働いている人」と「働いてない人」で見ると……

今までご覧いただいていたのは65歳以上か65歳未満かという単に年齢で切っただけの数字なのです。でも、そういう切り方は果たして正しいのでしょうか?

年金のような社会保険制度は現役で働いている人が保険料を負担します。年齢に関係なく働いていれば保険料は負担しますし、逆に働いていなければ年齢が若くても保険料は払えません。

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そういう観点で考えると、単に年齢で切り分けて、その比率を比べるのではなく「働いている人が働いていない人を養っている割合がどれぐらいか」で考えるべきです。つまり1人の就業者(働いている人)が何人の非就業者(働いていない人)を支えているか、を見ることが大切なのです。そういう観点で実際の数字を調べて見ると全く違う風景が見えてきます。

「働いている人」の数字は変わらない

図表3をご覧ください。これは慶應義塾大学の権丈善一教授の著書『ちょっと気になる社会保障』(勁草書房)の4ページに出てくる図をベースにして私が作成したものです。今から5年程前に権丈先生が作られた図を見て、まさに「目からうろこ」の思いでした。そこで、私も実際に一次情報のデータを元にして自分で計算してみたのがこの図です。1人の働いている人が何人の働いていない人を支えているかを示しています。

現在、2020年では1人が0.89人を支えています。30年前の1990年には1人で0.96人、そして半世紀前の1970年の時は1人が1.05人という数字になっています。なんとお神輿型と言われていた1970年よりも今の方が高齢者の数は増えているにもかかわらず、支えている人数自体はわずかですが、減っているのです。

さらに20年後を見てもその数字は0.96人ですからほとんど変わりません。20年後の2040年というのは少子高齢化がピークを迎える頃と言われていますが、その頃でも今とほとんど同じなのです。つまり、「何人の働いている人が、何人の働いていない人を支えているか」という観点で見ると、昔からこの数字はほとんど変わっていないし、今後もほとんど変わらないということがわかります。

これを読んでいるみなさんはなんだかキツネにつままれたみたいな印象をお持ちではありませんか? そうですよね、では次になぜ、こうなるのかを説明します。