ビジネスマンが海外旅行へ行く際、必ず持たなければならないもの、パスポート。出発の3日前に期限が切れていたことがわかっても後の祭り。大事な商談ができなくなり、業績もますます悪化ということは誰もが恐れるところだ。だからこそ周到に用意をしなければならないのだが、人間が過ちを犯すものであることも事実である。

もし、出発の直前になってパスポートの期限切れが判明したらどうするべきだろうか。これも一見、解決不能に見えるが、実は、知己の外務省キャリア官僚さえも知らなかった驚きのやり方があった。

通常、パスポートの発券には、7日から10日かかる。住んでいる場所が本当にあっているのか、「はがき」でのやりとりがあるために、時間がかかる。

そこで「緊急発券」という仕組みを利用する。「緊急発券」とは、たとえば、外国で家族が事故やアクシデントに見舞われ、緊急に海外へ行かなければならない事態になったときなどに、パスポートを即時発券できる仕組みだ。

これを公務やビジネスについて応用する。外務省に上申書として、現地でのスケジュール表と会社の出張命令書を提出する。たとえば、海外で行われる製品発表の展示会のブースや、企業の研究開発の発表や研修の要項などもその際に添付するのがよい。

海外へ遊びに行くのではなく、オフィシャルな用事で出向く。もし自分が出席できなかったら、企業が損失を被るばかりか、ひいては国益を損じてしまう、ということを強調できるものがあれば、大きな助力となりうるだろう。さらには、現地の主催者からの自分の名前の入った要請文があれば心強い。どうしてもイベントの初日に間に合わなくてはいけない、と強くお願いをした例もあると聞いた。

最終的な判断は外務省で下されることになる。上申書が信頼に足るのか吟味されたうえで、パスポートは即発券される。濫用は避けなくてはならないが、この仕組みで助かった人は少なからずいる。国益を守る意味でも、パスポートの発券をあきらめず、大いに海外で活躍していただきたい。

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=浜村多恵 写真=AFLO)