イーロン・マスクはほら吹きなのか

イーロンの言葉は、良く言えば、未来への希望を持たせてくれる言葉だ。「地球温暖化を食い止めるために、世界中のガソリン車をEVに置き換える」と公言し、テスラが自信を持って世に出した3万5000ドルのEV「モデル3」は予約注文だけで40万台を突破した。

画像=テスラモーターズジャパン合同会社
2016年3月31日に発表された「テスラ・モデル3」

とはいえ、イーロンの言葉は誇大広告で、ほら吹きだと批判する人たちもいる。

2016年にイーロンは、「完全な自律走行は、基本的に解決された問題だ」として「2年以内に完全な自律運転が可能になる」と述べていた。このとおりなら、2018年にはレベル5の完全自動運転ができているはずだった。

2019年のテスラの投資家説明会で「2020年までに完全自動運転を実現させる」と発言し、2020年12月には「テスラ車が1年以内にレベル5に到達することを多大に確信している」と述べている。

だが、テスラの自動運転オートパイロットもそのオプションであるFSDも、正確には運転支援機能であり、まだドライバーの監視が必要なレベル2のままだ。

過激な言葉と開発現場の違和感

さらに、自動運転に関するイーロンの過激な言葉が、テスラの自動運転開発チームとイーロンとの間に溝を生んでいるとの話もある。

例えば、テスラの自動運転開発メンバーは今年3月にカリフォルニア州車両管理局(DMV)に対し、「2021年内に完全自動運転の実現はできない可能性が高い」と示唆していた。それにもかかわらず、イーロンは今年1月の決算発表では「今年、人間を超える信頼性でクルマを自動運転させることができると確信している」と述べていたのだった。

一方で、イーロンの言葉が多くの投資家たちを惹きつけてきたことも間違いない。そして俯瞰すれば、イーロンのスケジュールはおおむね2年から5年程度遅れるものの、最終的には実現していた。

それは2006年の「マスタープラン」に見て取れる。内容は次の4つだ。

①スポーツカーを作る
②その売り上げで手頃な価格のクルマを作る
③さらにその売り上げで、もっと手頃な価格のクルマを作る
④上記を実行しながら、ゼロエミッションの発電オプションを提供する