「強者の論理」で片付けてはいけない
プレスコットは、理論的なモデルをつくった上で、アメリカと日本の戦後の成長の軌跡からパラメターの値をできるだけ現実的なもの(アメリカと日本の戦後の成長を説明できるもの)にカリブレートしていきました。
その上で、そのモデルをフランス、西ドイツ、韓国、台湾の戦後の成長と照らし合わせて妥当性を確認しています。その結果、抵抗が大きいと、企業が新技術を導入する時に大きな投資(コスト)がかかってしまい、それが国の成長を阻害していることが改めて明らかになったのです。
新しい技術を導入することへの抵抗というのは、イノベーションによって破壊されないようにするために、大きな壁を作って自分を守っているようなものです。そのような壁を作っていては、世界で競争していくことはできません。
このように言うと、日本ではしばしば「それは強者の論理だ」と片付けられることがあります。しかし、その言葉が正当性をもつ社会ほど、ラディカルなイノベーションは起こりにくくなり、累積的なイノベーションを重ねることに多くの経営資源が割かれることになります。