働く母と非母親の格差

子育て罰とは、もともとOECDで使われているChild Penaltyが日本語に翻訳されたものです。

「子育てしながら働く母親(ワーキングマザー)と子どもを持たない非母親との間に生じる賃金・格差を示す経済学・社会学の概念」なのです(桜井啓太「『子育て罰』と子どもの貧困」,『子育て罰』光文社新書,p.62)。

私自身はそのような労働市場を改善どころか悪化させてきた日本の政治・社会のありようそのものを批判する概念として「子育て罰」という概念を用いています。

真の保守は「国の宝」である子どもを大切にするのですから、「子育て罰」をなくすことに注力するはずです。

しかし日本では女性差別がいまだに横行しており、シングルマザーや子どものいる女性労働者の低い賃金や、厳しい就労環境につながっています。

2020年安倍政権の全国一斉休校で職を失いもっとも深刻な状況に陥ったのは、子どもを持つ女性労働者でした。

そのことは以下の記事にもすでにまとめてあります。

※参照:末冨芳「#夏休み延長 日本はまた子育て罰を親子に課すのか? 命と学びは置き去り? #一斉休校 は最悪の選択」

とくにシングルマザーは先進国一就労率が高いにもかかわらず先進国最悪の貧困率となっています。「働くことが貧困改善につながらない異様な国・日本」(桜井啓太氏前掲,p.73)をいますぐ改善することが必要です。

写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです

だからこそ、子どもを持つ女性労働者も多い「医療」「保健」「福祉」「教育」の現場で活躍する方々の処遇改善と体制拡充に注力する高市氏の政策は、重要です。

子育て罰をなくすためには、上記4領域に限らず全職種での女性労働者とくに子どもを持つ女性への差別の改善が急務です。

「強さ」を意識したメッセージだけでは「安心感」をもたらせない

総裁選の会見や演説会を見ていると、高市早苗氏の政策立案能力の高さ、冷静な判断力には感嘆する場面もあります。

いっぽう「強さ」を意識したメッセージばかりでは、コロナ禍で疲弊する日本、とくに全国一斉休校の犠牲になった親たち子どもたちに「安心感」をもたらすことはできないのではないかとも感じます。

「安心感」ではなく、親子にこそ「安心」を実現するという確かなメッセージを発し政策を示すことこそ、保守政治家として守るべき日本国の成長と繁栄を実現していくリーダーとして必要なことではないでしょうか。