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コミュニケーションが得意だと思うか?

会社内個人として効果的に仕事をするには、安易に名刺に頼らず、自分は会社員である前にこういう人間だとプレゼンできるかどうかが重要だ。「自分プレゼン術」とでもいえるものだが、これには自分をどうにかして相手と繋げる技術が必要となる。成長社会の中では黙っていてもみんなと繋がっていたが、成熟社会においては自分から働きかけなければならないのだ。

この技術を鍛えるには、幼稚園や小・中学校などを核にした地域のコミュニティに参加するのがいい。そうしたコミュニティではビジネスマンとしての肩書は必ずしも意味を持たないばかりか、名刺をちらつかせた瞬間に嫌われかねない。名刺を出さずにどのようにして相手と関係を結んでいくかという練習ができる。

このように他人との繋がり方が変化しているにもかかわらず、日本の教育は依然として、「正解主義」の下で行われてきた。その結果、正解としての「本当の自分」がいて、「それに合う相手が現れる」といった幻想を抱いている人は少なくない。そのせいで、「この職場では本当の仲間ができない」と思い込んでいる人もいるのかもしれない。

お互いの個性を尊重する成熟社会では、「正解の自分」「正解の職場の仲間たち」なんてものはない。変化する自分と変化する相手が巡り合う。従って出会った後は、ベクトル合わせをしていくのが自然だろう。これは正解主義に対して

「修正主義」とでも呼べるものだ。修正主義は、まず自分の意見を述べ、次に相手の意見をしっかり聞き、自分の意見を修正していくという考え方である。正解を当てることではなく、そのときの状況に合わせて、自分の意見を変化させていくことが大事だ。

修正主義は、ビジネスにおいても役に立つ。例えば、新規事業を小規模なものからスタートさせておき、この店舗でいいのか、この商品でいいのか、このサービスにはなぜクレームがきたのかなど、周囲との密で深い対話を通しどんどん修正し、育てていくことが可能となる。修正主義は、成熟社会での新しいコミュニケーションの方法だといってもいいだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(小澤啓司=構成 大杉和広=撮影)