コマツ、グーグルの高収益の秘密とは

携帯電話でもよく似たバンドリング戦略が用いられてきた。電話会社が端末機を安価で販売することによって、端末機を安く売っても、販売後の電話料金で収益をあげることができる。バンドリングが上手にできる企業ほど、機器の価格を下げて多くの顧客を吸引できる。

第2は、機器の販売を主たる収益源にするというパターンである。通常の機器販売では、こちらのパターンのほうが圧倒的に多い。販売後のサービスを、機器の販売の手段とするものである。自動車の販売がこの典型例である。販売後のサービスはあまり儲からないが、販売後のサービスがあることによって機器の価値を高めることができるので、機器が売りやすくなる。

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2つのパターンのバンドリング戦略

自動車がこの典型であるが、神戸の風呂釜メーカー、ノーリツも、このパターンのバンドリング戦略をとっている。風呂釜の修理のために日本国中にサービスマンを置いている。このサービスの充実が製品販売につながっている。同じく神戸の血液分析器メーカー、シスメックスもこのパターンのバンドリング戦略をとっている。日本国内の分析器をすべてモニターして、装置が最適状態から少しでもずれ始めたらすぐに調整に出向くというサービスをしている。それによって、血液検査データの信頼性を高め、医師にとっての装置の価値を高めることができて、競争優位を実現することができる。

よく似た戦略をとっているのが小松製作所である。同社は、鉱山での機械の自動運転サービス事業に進出し、その一環として、機械のモニタリングシステムを確立した。そのモニタリングを通じて故障の可能性のある部品をあらかじめ近くのデポまで運んでおき、スピーディな保守サービスができる。それによって、サービスのコストを下げながらその質を向上させることができた。

バンドリング戦略を展開するための鍵はモニタリングである。顧客が使っている機器の問題を顧客より早く見つけて手を打つためには、使用されている機器の状態を遠隔地からモニターし、顧客より早く問題を見つける必要がある。

その鍵となるのはセンサーの技術と通信技術、自動判定技術。

バンドリング戦略の実行のもう一つの鍵はサプライチェーンマネジメントである。サービス部品の需要は1カ所で大量に発生するわけではない。少量の需要が分散して起こる。サービス拠点での在庫を最小限に抑えておかないと、全体としての在庫量が過大になる危険がある。

しかし、在庫を減らしすぎると、品切れが起こってスピーディなサービスができなくなり、サービスの質が低下する危険がある。拠点ごとに最適な在庫量を適切に決め、在庫を過不足なく維持しなければならない。きめ細かいサプライチェーンマネジメントが要求されるのである。

厳密な意味ではバンドリング戦略と呼ばないが、自動車部品メーカーもよく似た戦略をとっている。自動車メーカー向けの部品販売はあまり儲からないが、自動車メーカーに採用された場合には、アフターサービス用の補修部品で利益をあげることができる可能性がある。

これもまたバンドリング戦略だ、と解することができる。このバンドリング戦略を実行するときに鍵となるのは、部品を特注部品化することである。汎用部品だと後で収益を上げることが難しくなる。

バンドリング戦略の意味を広くとると、グーグルやヤフーなどの検索サービスも一種のバンドリング戦略だと考えることができる。ソフトを無料で提供していても、その後の使用段階での広告ビジネスで収益を上げることができるからである。ソフト開発と広告事業がバンドルされているのである。

製品価格の低下によって、バンドリング戦略のパターンの変革が必要になってくる場合もある。自動車は第2のパターンのバンドリング戦略をとっていたが、電気自動車になり製品価格の低下が起これば、第1のパターンのバンドリング戦略を模索する必要が出てくるであろう。

※すべて雑誌掲載当時