中高年の「しがらみ」に縛られないために

ユースシティに暮らす人は、原則、ユースシティ内で仕事をする。

テレワークで本社などとつながって仕事をするのでもよい。出資する企業が30代以下だけのサテライトオフィスを設ける形でもよい。

河合雅司『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』(講談社現代新書)

一方、リアル店舗や子供が通う学校の教員などは、できる限り30代以下が望ましいが、難しい業種もあるので年齢制限は設けないこととする。

人口減少社会においてユースシティが求められるのは、一般的に大勢で競い合ったほうが才能は磨かれやすいからだ。少子化の影響で年々若い世代が減っていくと、それがままならなくなるからだ。どの業種や企業も優秀な若者を確保しようと囲い込みに走るため、さらに若い世代は分散することになる。これではあらゆる分野で層が薄くなってしまう。

ただでさえ他国に比べて若い世代の比率が低いのに、中高年の「理屈」を押し付けられ、「しがらみ」に縛り付けられたのでは、せっかくの“若さ”が台無しとなる。

若い世代らしいアイデアは、若者同士で自由闊達に意見交換をしたり、率直な考えをぶつけ合ったりすることの中でこそ生まれる。さまざまな分野の若い世代が仕事だけでなく、趣味やプライベートで人間関係を築くこととなれば、彼らが中高年になって以降の大きな人脈、財産ともなるだろう。

「社会の老化」をせき止めるパワースポットづくり

20年後の大学生は今より3割少なくなる。

ユースシティ構想とは違う切り札になり得るのは、ユースシティのコンパクト版ともいうべきアイデアだ。大学の共同キャンパス化である。

大学が密集する東京・御茶ノ水のような「学生街」を、全国各地に創出しようというのである。

若さ溢れる学生たちが社会に与える影響には大きなものがある。しかしながら、総務省の人口推計(2019年10月1日現在)によれば、0歳人口は89万4000人で、20歳(125万5000人)の71.2%だ。

大雑把に見積もって、20年後の大学生は現在より3割少ない水準にまで落ち込むということである。

ハイスピードで少なくなっていく学生たちがバラバラに分かれて学んでいたのでは、“学生らしい若さ”が世の中を動かす力は、人数の減少以上に弱くなっていく。

こうした状況を阻止するには、地域ごとに大学が共同キャンパスを作り、学生たちが恒常的に集まれる機会を提供することだ。それは枯れゆく日本におけるパワースポットとなり、「社会の老化」が進む中での、瑞々しいオアシスという場所となろう。