都民ファーストは態度未定層から票を稼いだ

現在の日本では、多くの人々は投票先の決定を投票直前に行います。こうした態度未定層をどう捉えるかが結果予想のカギとなります。

投票日よりも前に調査を行うと、古くからの強固な支持者が多い自民党の投票予定割合の数字は、他党に比べて突出しがちになります。たとえば2019年参院選の読売新聞の公示直後の世論調査では、36%の回答者が比例区で自民党に投票すると答えていました。政党名を挙げたのは全回答者のうちの67%でしたから、投票態度決定層のうち実に54%が自民党に投票予定としていたのです。なお、実際に投票した人のうち自民党に投票したのは35%でした。

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これに対して、無党派層を狙うような新興政党はこの態度未定層から票を稼ぐ傾向にあります。国政選挙の情勢調査では、日本維新の会(旧維新の党)の予想獲得議席数が実際の結果に比べて過少に見積もられる傾向が知られています。これは、維新の会が世論調査非回答層と態度未定層から多くの票を集めているためと考えられます。たとえば、同会が国政進出を果たした直後、2013年参院選の公示直前の読売新聞世論調査では、態度決定層の7%が維新の会に投票するとしていましたが、実際の選挙では投票者のうち12%が維新の会に投票していました。

この点は、都民ファーストも同様です。前回2017年の都議選では、事前の世論調査の投票予定割合では自民党と都民ファーストは拮抗していました。しかし、実際の得票数では1.5倍もの大差がついていました。

このような性質や実態があるため、公示・告示直後の世論調査の数字だけを見て結果を予想することは難しく、予想を当てるためには態度未定層の投票行動の動向を占うことが欠かせません。

「支持政党なし」の人たちは直前まで投票先を決めない

候補者が出揃ったばかりの告示日直後に調査すれば、態度未定の人が多数含まれます。支持政党を持たない多くの人は告示日直後の早い段階では投票先を決めません。そうした層に好まれる有力な勢力が選挙に出ているなら、投票日の数字が告示直後の数字と異なって当然なのです。

とは言え、多くの態度未定者は全くノープランというわけではありません。小池都知事を支持し、都民ファーストに投票する可能性が高い有権者でも、告示直後の考えが定まっていない、あるいは候補者の名前を覚えていないような時点で選挙について聞かれたら、「まだ決めていない」と答えざるをえないというだけです。

繰り返しますが、事前の世論調査の数字だけを見て選挙結果を適切に予想することはできません。逆に言えば、事前の世論調査を参考に「予想」をこしらえた政治評論家等を含め、こうした知識や想像を踏まえずに先の表のような数字を額面通りに受け取ったために、多くの人は自民党が圧勝すると思い込んでしまったのでしょう。

そして、この予想と選挙結果の穴埋めのために、有権者の投票予定の急変を指摘しているのです。小池都知事への同情やワクチン不足などが影響した可能性を否定はしませんが、態度決定が行われた際に直前の何かが影響しているはずだと考える必要はありません。必要だったのは、予想の際に態度未定者の多くが都民ファーストに投票する可能性を織り込むことです。そうでなければ、それは「予想」ではありません。