「それな」を英語で伝える時は要注意

I know the feeling.という表現がある。相手の体験談聞いたりして、「わかるわー、それ」という感じの意味だ。「自分も同じ体験をしたことがある、言っていることがよく理解できる」という共感を示すフレーズである。今の若者の言葉で言えば、「それな」というところだ。

共感はもちろん「つながり」志向だ。ただ、このtheには微妙なニュアンスが込められている。定冠詞のtheは、「あなたも私も知っているその」というような意味合いである。この場合のthe feelingとはあなたが経験し、そして私も経験したことがある、二人が共有している「その感情」だということである。「あなたの感情」ではなく、「あなたも私も共有しているあの感情」というところがポイントだ。

この表現が「わかるわー、それ」という意味合いのフレーズだとするならば、「私はあなたの気持ちがわかる」という意味でI know your feeling.と言ってしまいそうだ。

しかし、定番の表現はI know your feeling.ではなくI know the feeling.である。I know your feeling.と言うと〔(相手の心の声)なに、この人、なんで私の気持ちがわかるの、ずうずうしい〕と、自分の領域を侵害されていると感じたり、引いてしまう英米人もいるだろう。

「あなたの(your)気持ちがわかる」だと、相手の領域に入り込み過ぎることになってしまう。〔この人(相手)、私の気持ちの中に入ってきてキモチ悪い〕のだ。

井上逸兵『英語の思考法』(ちくま新書)

このように基本的に共感の表現であっても、単純に「つながり」志向だけが表れているわけではない。微妙に「独立」志向が頑として根っこにある。theyourのように文法的な使い分けにも、コミュニケーションのタテマエが関係しているのだ。

これは、「どうかしましたか?」と訊くときに、What’s your problem?とは言わず、What’s the problem?と言うなど、多くの表現でも同じである(前者は人の領域に踏み込み「何か文句あるか?」とケンカを売る表現になってしまう)。

文法でtheを学習する時、だいたい不定冠詞aとの違いを学ぶのが第一だろう。しかし、コミュニケーションのための文法を学ぶならyourとの違いを理解することも重要である。

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