好きなこと、楽しいことに意識を向けてみる

社会に与えられた役割を演じ続けた結果、本当の「私」が何を感じているのか、何を望んでいるのかがわからなくなってしまうこともあると思います。このように「私」の感覚が麻痺してしまった場合に有効なエクササイズがあります。

まずは自分が好きなこと、楽しいことに意識を向けてみましょう。楽しいと思えることは何ですか? 楽しい時、体はどのような感覚を受け取っていますか? たとえば好きなお菓子を味わっているとき、どんな気持ちになるかを五感で感じ取ってみてください。

このエクササイズを行なうと、「楽しい」という感情との関係性を再構築できます。すると、まるで見えない糸でつながっているかのように、もっと楽しいこと、感動的なこと、美しいものや魅力的なものをスルスルと手繰り寄せられるようになってきて、本当の「私」が何を感じているのかに敏感になれます。

美しさは一種のエネルギーであり、あなたを養ってくれます。あなたの人生においていかに意識的に美しいものと関わりを持つかによって、新しい選択肢が見つかったり、本当に望んでいる結果に至ることもあるのです。

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実例:半年で別人のように輝き始めた女性

具体例をご紹介しましょう。

以前ワークショップに参加したある女性は、千葉県在住で2時間かけて神奈川県内のテック系企業に勤めていました。初めて会った時の彼女は不安そうで、あまり元気がありませんでした。聞けば、文系の彼女は理系の職場になじめずに、辞めてしまおうか悩んでいるとのことでした。

プログラムで学んだことをきっかけに、彼女はそれから毎日の通勤電車に揺られながら美しいものを眺めたり、自分の人生でうまくいっていることに意識を向ける努力を続けたそうです。

果たして、半年後のワークショップで再開した彼女は別人のようでした。表情はやわらかく、不安は消え去り、内面から美しく輝いていました。

美しいものや、うまくいっていることに意識を向ける習慣を身につけてから、彼女は以前よりも広い視野で物事を捉えられるようになったそうです。その結果、居場所を見つけられずに辞めようか悩んでいた職場では、関連性のある研究を別々に行っていた社員同士の橋渡しをして、シナジー効果を生み出す業務を自ら開拓し、会社全体のイノベーションを推進するキーパーソンとなりました。

彼女の変身ぶりを目の当たりにして、わたしは一人ひとりが持っているパワーにあらためて気づかされました。マインドを変えるだけで、人はこんなにも変われるのだ、ということに。