主要先進国(G7)の中で日本と似ているのは、ドイツ
主要先進国(G7)の中で日本と似ているのは、ドイツであり、幸福感(表左側)では23位と低いが、ネガティブ感情度(表右側)からは13位とそれほど低くない(ネガティブ度が日本より低い)。主要先進国の中では、英国、フランスなどは、日本やドイツは逆に、幸福感は高いもののネガティブ感情度ではずっと低くなっている。
この結果を私なりに総括すると、
日本やドイツ:ふだんの機嫌がよいにもかかわらず幸福をあまり感じていない
英国やフランス:ふだんの機嫌が悪くても幸福を感じてはいる国民
の2タイプがあるのではないか。一方、
米国やイタリア:幸福に関する感情と幸福の自己理解にあまり齟齬が見られない
主観的な幸福度だけでも測り方によってかなり変わってくる点が興味深い。
「女性のほうが幸福度が低い」という世界の通例に反する日本人
ここからは、「ネガティブ感情度」を使って、男女、年齢、学歴といった属性別の幸福度の各国比較を見ていこう。原データはこれまでと同じ国ごとに毎年1000サンプル程度で行われているギャラップ調査であるが、結果のばらつきを抑えるため、長期間の平均値(2010~18年)が使用されている。
経済環境や文化の違いがあるため主観的幸福度の値を国民間で比較するのはやはり少し無理がある。感情面を指標化した「ネガティブ感情度」は、幸せかどうかを直接聞いた結果の「幸福感」より客観的であるとはいえ、やはり、国民性に多少左右されざるを得ないであろう。
しかし、考え方や感じ方を共有する同じ国民の間における男女、年齢、学歴といった属性間の比較は、全体としての幸福度ランキングより、むしろ、信憑性、有効性が高いと考えられる。
結論から言ってしまうと、世界のスタンダードは「女性・高齢・低学歴の者ほど幸福感が低い」というものだが、日本人は、これにすべて反している。日本は世界的に見て、特殊な国民であるということが見てとれる。
まず、男女差(ジェンダー差)から見ていこう(図表2参照)。
うつ病は、男性より女性のほうが多いというのが世界の通例であることからも類推できるように、ネガティブ感情度の男女比(男性÷女性)は、日本を除くすべての対象国で、1以下である。すなわち、女性のほうがネガティブで「マイナスの感情」を抱きがちである。
こうした世界的傾向について、ジェンダー論者は、男女差別によってこれが引きおこされていると速断しがちである。自殺がうつ病とは逆に男性のほうが多いのが世界の通例であることからもうかがえるように、ことは、そんなに単純ではない。
例えば、北欧諸国は一般的に男女平等意識が高いが、同じ北欧諸国でも、ノルウェー、デンマークでは、女性のほうが、ネガティブ感情度がかなり高くなっている(図表2、縦軸0.8以下」)のに対して、フィンランド、アイスランドでは、むしろ、男女比が1に近くなっており(男性も女性と同様にネガティブ感情度が高い傾向にある)、状況にかなり差があるのである。
それより何といっても、最も特徴的なのは、日本人だけ男性のネガティブ感情が女性を上回っている点(しかも14%も)である。これは、世界価値観調査などの幸福感でも日本人の幸福度の女性優位が目立っているのと軌を一にする現象であるといえる。