先の見通しが立たないことへの不安
子どもたちが抱く不安の原因は、先の見通しが立たないところにあります。
「この先も学校には通えるの?」
「感染するのに登校しないといけないの?」
「コロナに感染したらいじめられたりしない?」
「勉強についていけなくなったらどうしよう……」
具体的な解決策や見通しが見えない状況に対して、子どもたちは不安を高めています。
大人たちは、自分の心や体の状態や変化を自覚することができます。不安を覚えたら、その問題解決のために情報を集めたり、取捨選択をしたり、その先の対策について具体的にイメージを抱いたりすることができます。そのため、成長過程にある子どもたちに比べれば、自分の感情に振り回されてパニックを起こすことは少ないといえます。
ところが、不安感に押し潰されそうな子どもたちは、まず、そんな自分の気持ちを明確に把握し、言語化することが難しい面があります。
自分がストレスを感じていること、心や体の悲鳴に気がつくのも難しいため、正体の分からない不快さにさいなまれ、感情を爆発させたり、パニックを起こしてしまったりすることも珍しくありません。時に腹痛などの身体症状を訴えることもあります。
多くの親御さんは、そんな子どもたちの状況がよく分からず、その場を落ち着かせようと、つい「大丈夫、心配ないよ」と口にしてしまい、かえって子どもの敏感な部分を刺激してしまいがち。子どもの不安をケアする働きかけが、うまくできないケースが多いのです。
子どもたちの危機に気づくのも「親」
しかし、子どもたちの心の危機にいち早く気づくことができるのは、いつもそばにいる親御さんたちでもあります。親御さんが家庭内で適切な子どものメンタルヘルスをサポートするには、いったいどうしたらいいのでしょうか。
その実践に役立つのが、逆境や困難に負けない力(レジリエンス)を育てる教育メソッドです。
たとえば、私の専門とする「レジリエンス教育」は、子どものメンタルヘルスのために、世界的に教育現場で広く導入されています。うつ病をはじめとする精神疾患の予防はもちろん、子どもたちの持つ心の力を育て、どんな時代でも、自分らしく、たくましく、幸せに生きることを目的とした教育メソッドだからです。
子どものレジリエンスを育むことは「心のワクチン」ともいわれており、コロナ禍にあっても、家庭内で子どもたちを良い方向に導くために使える方法がたくさんあります。