ワクチン接種のスピードアップが日本全国で課題となっている。このうち愛知県豊田市は、トヨタ自動車などと協力して高速接種システムを作った。現地を取材したノンフィクション作家の野地秩嘉さんは「東京の大規模接種センターは30分かかったが、豊田市モデルは4分で終わる。やり方が根本的に違う」という――。
提供=トヨタ自動車
トヨタ自動車が支援するワクチン接種会場。1日600人程度が接種に訪れている

続々と進むワクチン接種

日本の人口は約1億2500万人。6月14日までの新型コロナ感染者数は累計で77万6139人。亡くなった方の数1万4137人、退院者73万446人(NHK調べ)。国民のほとんどというか、圧倒的多数は感染していない。

新型コロナが世界を覆うようになってから1年以上、日本国民はステイホーム、マスク、手洗い、黙食などで冷静に対処し、効果を上げている。マスコミ報道を見ていると、みんながみんな路上飲みをしているように思えてしまうが、そんなことはない。日本国民は真面目だ。その真面目さが新型コロナに対しての最大の武器だ。

そこに効果の高いワクチンが加わった。感染と重症化を防ぐ有効性はファイザー製で95%、モデルナ製は94.1%である。マスクと手洗いを続けている人がワクチンを打てば安心感は増す。さらに日々平穏に暮らしていくことができる。

ワクチン接種は打った人だけがメリットを得るわけではない。なんといっても医療従事者の負担を減らすことができる。

接種が加速すればするほど、彼らは安心する。彼らのためにもワクチン接種はした方がいい。自分たちのためだけではない。

大手町の大規模接種会場に行ってみた

5月25日。大規模接種が始まって2日目。64歳のわたしは高齢者のひとりとして自衛隊が運営する東京・大手町の大規模接種会場へ向かっていた。

「64歳なのにワクチンを打つ? けしからんな」などと叱られる筋合いはない。学齢では65歳だから、接種することができたのである。

予約した時間、午後4時よりも早く、東京メトロの竹橋駅に着いた。改札口を出ると、「自衛隊東京大規模接種センター」と書いた看板を持った案内係が立っていて、「あちらです」と促す。建物に着くまで、路上に立つ案内係が5人はいた。大規模接種には大勢の人が動員されている。

会場の入り口には列ができていた。定員は1万人だが、すべり出しのころは5000人だった。それでも列はできる。ただし、せいぜい数メートルで、入り口に入るまでに待つ時間は5分ほどだった。

周りを見わたすと、来場者は女性の方が多かった。女性は半袖もしくはノースリーブ。それに薄地の上着を羽織っていた。一方、男性は半袖ポロシャツにゴルフ用のパンツでコーディネートである。女性がグレースフルな装いで登場しているのに比べ、男性は画一的だった。