LGBTを「異物」として恐れる保守派

教育制度もそれに習った。とびぬけた天才は日本型コーポラティズムには必要がない。天才はある分野で突出した才能を有するため、均質を何よりも重点とする社会では寧ろ生産を阻害する攪乱要因になりかねない。

だから日本の教育現場では、永年画一的で均質的な、製造業が必要とする「優良児童・生徒」が大量に排出された。それに伴って、社会からは企業や国家が想定する「規格」からはみ出した人間は異物として認定されるようになった。これによって日本社会は、国際市場の中でとびぬけた一部の天才がもたらしたイノベーションの結果としての「GAFA」群に圧倒され、所謂デジタル敗戦を迎えることに相成ったわけである。

保守派による同性婚の拒否感は、つまるところこういった旧い日本型コーポラティズムを護持したいという魂魄と、心底で「異物」を拒絶する世界観が大きくのしかかっている。繰り返すように、今次LGBT「理解増進」法案が成立し、それが同性婚実現への道に接続したとしても、それは現状の追認に過ぎず、LGBT以外の異性愛者の社会には何ら変化も影響もない。保守派はLGBTを「異物」として認定し、それが社会を壊す脅威として認識しているが、それは全くの虚言であり間違いであると言わなければならない。

法案成立の断念の理屈は「根拠のない偏見と無理解」

何度も繰り返すが、LGBT関連法案が立法されようとされまいと、LGBTは増えたり減ったりしないのである。

このようにしてみていくと、LGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法案に対する保守派の抵抗と法案成立の断念の理屈は、至極あいまいで根拠のない漠然とした偏見と無理解から成り立っていることが分かるだろう。

保守派は日本の伝統と言いながら日本史に無知で、自分の思想と相いれない者の政治運動を活動家とレッテルし、同性婚は社会を壊すという嘘を流布し続けている。このような歪んだ声がLGBT「理解増進」法案を闇に葬ったならば、日本は世界から笑いものにされ、もはや五輪どころか「先進国」という冠名すら返上しなくてはならない時が来るのではないか。

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