政府が支出をケチった分、母親が無償ケア労働している

しかし、どうにかならなかったら、どうなるのでしょう。保育園に入れなかったら? 仮に入れても、ものすごく遠かったら? 延長保育がなかったら? そもそも、子どもが病気がちで保育園にまともに預けられなかったら? そのために会社にいることが難しくなったら……?

これらは、実際に多くの子育て世帯で起きている現実です。その埋め合わせを引き受けているのは、大抵の場合、ママです。ママたちが時短勤務にしたり、時には退職したりして、家事育児を一手に担っています。政府が財政支出をケチったツケは、「無償ケア労働」という形で、ママが支払っているのです。財政の節約は結構ですが、家族関連支出の削減は、単に負担をママに押し付けているだけです。

無償ケア労働とは、家庭で行われる家事・育児・介護等のこと。前回の記事でもご紹介しましたが、日本のママの無償ケア労働は、他国と比較して圧倒的に負担が大きいのです。一方、日本のパパの負担は圧倒的に少ない……(その分、有償労働時間が長い)。

M字カーブ改善とともに出現したL字カーブ

一方で、最近のニュースなどでは、女性の就業率の上昇が伝えられています。つまり、働く女性が増えている、と。確かに、いわゆる「M字カーブ」(図表1の上のグラフ)は近年、改善してきました。結婚、出産を機に専業主婦になる女性は、どんどん少なくなっています。

しかし、同じ図表1の下のグラフでわかるように、フルタイムでの就業継続は、変わらず困難な状況が続いているのです。この現象を「L字カーブ」と呼びます。20代から、ジリジリと正規雇用率が減少しているのがわかりますよね。この、徐々に雇用率が下がっていく様が、本当に切ない。どうにかキャリアを維持しようと頑張ったけど、一人、また一人と、バタバタ力尽きていくママたちを見ているようです。

厚生労働省の「コース別雇用管理制度の実施・指導状況」によれば、1995年に総合職を採用した企業のうち、10年後に一人も女性総合職が残っていない企業は、なんと、4割に達します。2010年度の調査でも、2000年度採用の女性総合職は10年で65.1%が辞めています。

もちろん、自由度の高い働き方を希望してキャリアチェンジをした人もいますが、その理由の多くが「子育てとの両立」です。そして、会社の中でキャリアアップを望んでいたママたちは、この状況をどうにかしようと、あらゆる手を打ってきたのもまた事実です。ベビーシッター、延長保育をやっている無認可保育所(とても高額)、病児保育……等々、身銭を切って、どうにかキャリアを維持しようとしています。

しかし、そんなママに対する社会の目は非常に冷ややかです。陰に陽に「子どもがかわいそう」なんて言葉爆弾を炸裂させる人もいます。ママたち自身も悩んでいます。国立社会保障・人口問題研究所が結婚経験のある女性を対象にした「全国家庭動向調査」によると、「自分たちを多少犠牲にしても、子どものことを優先すべき」への賛成割合は、2008年の第4回調査で81.5%。1993年の第1回調査(72.8%)から毎回上昇しています。

そんな世間からの圧力と、自身の母としてのあるべき姿とのギャップに晒され、ママたちはキャリアアップの望みを諦めていきます。「そこまでして……」とつぶやいて。