打ち上げ費用の節約が、他国を危険に晒している

中国ロケットの問題点についてもう少し付け加えよう。

普通はロケットの切り離された1段目は被害の出ない海域などに落下させ、2段目は地球の周回軌道に乗った後に落下させる。この2段目は小さいために大気圏内で燃え尽きる。

しかし、中国のロケットの構造は違う。中国側が公表していないために詳細は不明だが、長征5号B遥2の全長は54メートルとかなり長く、大きな主要部まで周回軌道に入り、その後、噴射を終えて落下し始めた。大型のためになかなか燃え尽きず、その残骸がいつどこに落ちるかはまったく分からず、多くの国を危険にさらすことになった。

中国の狙いは打ち上げ費用を抑えることだ。主要部までを周回軌道に乗せることで、ロケットの切り離し回数を減らすことができる。自国の利益しか頭にない。そのためには他国に及ぶ危険は無視する。ひどい話である。

5月15日には中国探査機が火星への着陸に成功

ところで、中国国営の中国中央テレビが5月15日午前8時すぎ(日本時間)、火星探査機「天問1号」が火星への着陸に成功した、と報じた。中国の探査機として初めての火星着陸となった。これから搭載された無人探査車が火星の地表を走り、地形などが調査される。

天問1号は昨年7月に打ち上げられ、今年2月には火星の周回軌道に到達していた。

火星の着陸は旧ソビエトとアメリカに次いで3カ国目だ。中国は「宇宙強国」を目指し、火星や月の開発をリードすることに躍起になっている。この背景には、今年7月に中国共産党が創立100年を迎えることで、習近平(シー・チンピン)政権の宇宙開発の実績を国威発揚に結び付けようとする狙いがある。

中国はアメリカに対抗して独自の宇宙ステーションを建設している。そのための資材を運ぶため打ち上げられたロケットの1つが、今回の大型ロケットだった。

中国は今後、実験棟や物資補給船を打ち上げ、2022年12月には宇宙ステーションの組み立てを終了するという。