日本の合計特殊出生率は、人口維持に必要な数2.07(人口置換水準)を下回り、いまや1.3台に低下している。端的にいえば団塊ジュニア世代が子どもを多くもたなかったということだが、これは同世代だけのせいではない。戦後、日本の合計特殊出生率は一貫して低下を続けてきた。一組の夫婦がもつ子どもの数が減った。また、団塊世代以降は、未婚者が増えた。こうした歴史の積み重ねの下に、いまの少子化がある。

世界に冠たる長寿化スピード

少子化と並んで、人口ピラミッドの形状を決めるもう一つの要素は、寿命の長さである。日本人の平均寿命は、現在、男性81歳、女性87歳にある(2019年)。いずれも、世界トップクラスだ。

昔からそうだったわけではない。1960年代半ばは、女性の平均寿命は主要国中最下位クラス、男性も中位クラスにとどまっていた。それが、その後の約20年間に世界トップクラスに躍り出た。

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これには、いろいろな理由が挙げられている。暴飲、暴食を慎む国民性や衛生状態の良さなどである。しかし、見逃せないのは、やはり国民皆保険制度の存在だろう。「いつでも、どこでも、だれでも」受診できる医療制度の充実は、日本の長寿化に大きく貢献した。

その見方を補強するのは、米国の動向だ。米国は、オバマケアが導入されるまで、国民皆保険の制度が整えられてこなかった。その結果、平均寿命は、男女ともに主要先進国中最も短い部類にある。日本に比べ、男性で5年、女性で6年短い。

半永久的に続く「脚の長い凧型ピラミッド」

こうした少子化と長寿化の延長線上に、前掲図表1右図の65年の人口ピラミッドがある。特徴は次の3点だ。

第1に、総人口は年々減り、ピラミッドの規模は縮小していく。2065年の総人口は約8800万人と、2015年対比3割方縮小する。さらに、2083年には約7200万人まで減少し、戦争直後と同水準となる。戦後から60年強かけて増えた人口約5600万人が、七十数年かけてすべて吐き出される計算にある。

ただし、過度に悲観視すべきものではない。人口約7200万人は、2020年時点の世界各国の人口でいえば、19位前後に相当する。現在のイギリス、フランス、イタリアよりも多い。グローバルな視点からみれば、日本消滅や地方消滅を心配しなければならない話ではない。人口減少のトレンドに歯止めがかからないことは問題だが、21世紀中は、多人数の国家であることに変りはない。