競争力でとうとう中国に抜かれた

リーマンショック後の世界経済において、中国共産党政権は高速道路や鉄道建設などのインフラ投資によって景気を維持しつつ、“中国製造2025”によって半導体の自給率向上や電気自動車(EV)の普及を推進した。“国家資本主義体制”の強化によって中国は在来分野から成長期待の高い先端分野へ生産要素を再配分し、経済成長の実現と軍備拡張に取り組んでいる。

中国は影響力の拡大を目指して台湾への圧力を強めている。台湾には、TSMCの生産拠点がある。台湾海峡の地政学リスク上昇は、政治、経済、安全保障のすべての面において米国にとって差し迫ったリスクだ。その対応のためにバイデン政権はわが国と首脳会談を行い、韓国との首脳会談も予定している。

他方で、中国は米国に対抗するために、産業活動に不可欠な半導体の自給率向上を急いでいる。それは、半導体関連企業の国際的な業界団体であるSEMIが発表したデータから確認できる。2020年の世界の半導体材料の販売額では、中国向けが韓国を抜いて世界第2位に浮上した(1位は台湾)。半導体の製造装置市場では中国が世界トップの需要地だ(2位は台湾、3位は韓国)。

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潜在的な成長力は軽視できない

わが国の半導体製造装置や半導体部材、工作機械メーカーの業況が回復しているのは、世界的な半導体不足に加えて、中国の共産党政権が半導体メーカーなどに補助金を支給し、半導体製造に必要な装置、部材、機械の需要が拡大しているからだ。特に、わが国企業が手掛けるシリコンウエハーやセラミックコンデンサは原料レベルから高い純度を実現し、模倣が容易ではない。

現時点で、最先端の半導体設計などの知的財産や半導体の生産技術に関しては、米国が競争上の比較優位性を維持している。ただし、製造装置は分解でき、技術の模倣が可能だ。それに加えて、米国の制裁を克服するために中国共産党政権は段階的に市場の開放を進め、その見返りに海外企業からの技術移転をより重視するだろう。人工知能(AI)や宇宙開発における中国の技術向上を踏まえると、中国半導体企業の潜在的な成長力は軽視できない。