バイデン政権は補助金を提供へ

近年、世界の半導体産業の構図が大きく変化している。その一つは、業界盟主の座が米インテルからファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に移ったことだ。世界各国の主要企業の多くは、最先端から汎用型までのほとんどの半導体に関してTSMCへの依存度が大幅に上昇している。

世界的に半導体不足が深刻化している現在、TSMCの存在感は上がるばかりだ。米バイデン政権はそうした状況に危機感を強め、中国の台頭阻止と自国の半導体生産の強化のために日台などとの緊密な連携を強化すると同時に、米国内での半導体生産体制を構築するために多額の補助金などを提供しようとしている。

ここへきて対中姿勢を強める文政権

その状況下、韓国のサムスン電子は、投資の積み増しや海外半導体メーカーの買収を模索している。それは、TSMCとの競争に加え、中国の半導体企業からの追い上げに対応する意図があるとみられる。

韓国経済にとって半導体産業は成長の牽引役だ。米国が半導体などのサプライチェーン再編に取り組んでいることを考えると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は安全保障面で米国と連携し、サムスン電子などの事業運営を支援することが重要な課題となるはずだ。

韓国の文在寅大統領(韓国・ソウル=2021年04月15日)
写真=EPA/時事通信フォト
韓国の文在寅大統領(韓国・ソウル=2021年04月15日)

ところが、足許、文氏の対中重視姿勢はむしろ強まっているように見える。中長期的な韓国経済の展開にとって、米国よりも中国重視の政策は大きなリスクを伴うと考えられる。中国企業は、いずれ韓国企業にとって強力なライバルになる可能性が高いからだ。韓国国内でもそうした見方を持つ世論が増加している。それは、文大統領の支持率が低迷する一因になっているとみられる。