中国に追い上げられる韓国の苦しさ

それは、基本的には日米の資材や資金、技術を用いて半導体メモリ分野などでシェアを獲得してきたサムスン電子など韓国の半導体産業にとって脅威だ。韓国のエレクトロニクス産業の一角では、中国企業との価格競争への対応に行き詰まる企業が出始めた。韓国のLG電子はスマホ事業から撤退した。

また、2020年の液晶パネルの出荷数では、中国の大手パネルメーカーである京東方科技集団(BOE)が世界トップだった。半導体の部材や製造装置市場における中国の購買量増加は、半導体分野でも韓国企業が中国企業の熾烈しれつな追い上げに直面しつつあることを示唆する。

それは、韓国経済にとって無視できないリスクだ。半導体以外の産業に目を向けると、造船を除いて韓国が国際競争力を発揮している産業は少ない。また、韓国経済の歴史を振り返ると、基本的には日米との関係がGDP成長に大きな役割を果たした。1960年代以降の韓国では、過去の保守派政権が財閥系大企業の事業運営体制の強化を重視し、汎用品の大量生産と輸出によってGDP成長を実現する経済体制が整備された。それが“漢江の奇跡”と呼ばれた高度経済成長期につながった。

日本からの技術移転で発展してきた

それを支えたのが、当時の韓国政府が米国との関係によって安全保障の基礎を固めたことだ。また、韓国はわが国などからの技術移転を重視し自国の工業化を進めた。韓国企業がエレクトロニクス分野での競争力を発揮したのは、わが国企業からの技術移転があったからだ。それが今日のサムスン電子や、SKハイニックスのDRAMやNAND型フラッシュメモリ市場での競争力を支えている。

IT先端分野を中心に米中対立は先鋭化し、米国は半導体、医薬品、バッテリー、レアアースなどの重要物資に関して自国を中心とした供給網の構築を目指している。韓国がそうした世界経済の変化に対応するためには、米国との安全保障面での関係を基礎に、国際世論との関係を築くことが欠かせない。それが、韓国企業と日米などの企業の円滑な取引と、外需依存度の高い経済の安定と成長を支える。