猫が幸せになる瞬間を近くで感じられる

菊地さんは、今では50人いるカフェのボランティアのとりまとめ役をこなし、服部さんの右腕的存在だ。

「もともとコツコツした事務作業が好きなんです。相性の良さそうな人同士を組み合わせるシフトを作ったり、組織マネジメントやイベント関連の企画も得意ですね。一周年記念ではケット・シーを通じて譲渡した120匹の猫の記念動画を作ったんです。5日間、ほぼ徹夜のような状態でしたが、これによって私たちの活動を応援してくれる人が増えると思えば、大変でもがんばれます」

撮影=笹井恵里子
服部由佳さんと、カフェでボランティアをする菊地麗子さん

とはいえ、菊地さん自身も別の仕事で勤務を続ける多忙な身。モチベーションはどこにあるのだろう。

「ここにいる猫への申し込みがあって、トライアル(試し飼い)期間を経て正式に譲渡になりました、というのを聞くと本当に良かった! と思います。過酷な環境の中で暮らしていた猫たちだから、清潔なトイレがあって、安心して眠れる場所があって、おいしいごはんが毎日食べられて、かわいがってくれる家族がいて、あぁ良かったって。猫が幸せになる瞬間を近くで感じられるんです」

有償の「仕事」のほうが質が良くなるとは限らない

事務仕事でさえも、「広い意味で猫のためになることだから苦にならない」と菊地さんは話す。

服部さんも「ここで働くメリットは、猫の譲渡が決まった時に、みんなに知らせて、わーっと喜ぶくらい」と笑う。

繰り返しになるが、ケット・シーに関わる全員が無給のボランティア。私は今回の取材で、ボランティアの役割を改めて考えた。お金をもらう「仕事」のほうが質が良くなるように思えるが、そうとは限らないという。

撮影=笹井恵里子
「ケット・シー」の店内に掲示されているノネコの啓発ポスター

「“思い”でここに来ているボランティアなら猫の体調を気にする。でもお金をもらって来ている人なら、決まった時間に餌をあげればいい、トイレをかえればいい、やることやっていればいいとなるかもしれない」(菊地さん)

いつの間にか来なくなる人もいれば、オープン以来ずっと続いているボランティアもいる。来ている人は、何らかの満足感があるのだろう。根底にあるのは間違いなく猫への愛情だ。

その愛情ゆえ、ボランティアのスタッフ同士で対立することもあった。