「このカフェにいる猫はみんな幸せ」

岩﨑さん自身も個人で、全国で殺処分されそうな猫の里親を探す活動をしていた。けれどもそれでは救える数に限界がある。ケット・シーのような場があれば、それだけ救える猫の数が増やせる。私はそれを聞いた時、「幸せでない猫」とは何だろうと感じた。岩﨑さんはきっぱりこう答えた。

「外にいて食べものに困っている、行き場のない猫です。保護猫はかわいそうという人がいますが、保護された猫はかわいそうではありません。このカフェにいる猫はみんな幸せ。環境が整っていて、病気になれば医療にかかれるのですから」

幸せでない猫を見た経験がありますか? と尋ねると、「はい」と、岩﨑さんの目が少し潤む。

「最初はカフェにお客さんとして来ていた」

岩﨑さんが9歳の頃、登校中の道沿いにある公園で、ダンボールが置いてあった。中には、ネズミのような小さな猫が3匹、入っていた。

(学校の帰りに助けてあげよう)

そう思い、岩﨑さんは学校へ行く。そして下校時にまた公園に立ち寄ると、猫は3匹ともダンボールの中で死んでいた。

「オセロ4兄弟」がご飯を食べる様子(写真提供=岩﨑日登美さん)

「何もされなかったら子猫はこんなに早く死んでしまうんだ、こんなに儚い命なんだ、と感じました。その死骸は家に持ち帰って、お庭に埋めましたが、それ以来、『(捨て猫を)見たらすぐに助けなきゃ』というのが自分の芯にあるんです」

岩﨑さんのような「預かりさん」のほか、カフェで猫の面倒をみるボランティアもいる。その一人が、菊地麗子さん。

「最初はカフェにお客さんとして来たんです。うちでは猫を2匹飼っていてこれ以上増やせないのですが、もっと猫に触れ合いたいと思いました。初めて来店した時に奄美大島のノネコのことを聞いて、ひどい話だと怒りを覚えました。きっとこのカフェは家賃もかかるだろうし、人件費はかけられないに違いない。私もボランティアとして手伝いたいと申し出たんです」