人が飛躍的に成長するとき

成長というのは、時間がかかるものなのです。その道程もけっして楽ではありません。

小川仁志『幸福論3.0 価値観衝突時代の生き方を考える』(方丈社)

ただ、人間というのは不思議なもので、それだけが成長のあり方だともいえません。

皆さんはある人が飛躍的に成長するのを目にしたことはないでしょうか? あるいは自分自身、なぜか急に成長したように感じることはないでしょうか?

もしかしたら、そこにはフランスの哲学者ベルクソンが唱える独自の進化論が関係しているかもしれません。

ベルクソンは、エラン・ヴィタールという概念を掲げています。直訳すると「生命の飛躍」という意味です。

つまり、ベルクソンによると、生命はけっして単線的進化を遂げたのではなく、むしろ多方向に爆発的に分散することで飛躍的に進化する側面があるというのです。

それを証明するために、ベルクソンは異なる進化の系統に属するはずのものが、類似した構造を持っている点に着目します。たとえば、軟体動物と脊椎動物という異なる進化の系統に属するはずの生物が、共に目のような複雑な器官を持っているのはなぜか考えたのです。

哲学者ベルクソン「進化論」から考える精神の「進化」

ベルクソンの説明はこうです。体の組織が、解決しなければならない問題との関係で臨界点に達したことによって、予測不可能な生命の変化を生じたというのです。いわば、何かを見たいという強い欲求がエネルギーとなって、それが臨界点に達し、目という器官が形成されたと考えるわけです。

少なくとも、人間に関していえば、こういうことはありそうな気がします。

よく筋肉を鍛えるには、その鍛えたい部分を意識してやらないとダメだといいます。そのように意識してトレーニングしていると、そこに神経が集中し、急速に成長したように感じることができるのです。身体と意識がつながっている以上、精神的な部分についても同じ理屈が当てはまるのではないでしょうか。