億万長者が「家族や友人を大事にする」合理的な理由

出所=『The Millionaire Mind』

図表1は『The Millionaire Mind』から抜粋した、アメリカの億万長者733人の、1カ月のライフスタイルに関するアンケートの結果です。

この結果で驚くべきことは、その上位を占めるのが、家族や友人と過ごす時間であることです。これには、アメリカの億万長者の多くは、中小企業を経営する、もしくは個人事業者であることが関係します。彼らの多くは時間が自由になるので家族と過ごす時間があります。さらに、事業の多くは個人や家族で起こした「家族企業」(Family Firm)なので、仕事も私生活も家族と一緒であり、家族の絆が強いのです。

家族や友人と時間を過ごすことは、精神的な面でも合理的です。オーストラリアのフリンダース大学が、1500人の高齢者に対して10年間にわたって実施した調査では、幅広い友人のネットワークがある人は、ない人に比べ、平均寿命が22%も長かったとの結果が報告されています。

スタンフォード大学のデビッド・スピーゲル教授が、1989年に「Lancet」誌に発表した研究では、ガンのサポートグループに参加したガン患者の女性の生存率は、参加しなかった人の2倍であり、痛みも軽減されたとの結果を報告しています。

友人が少ない若い人は、お酒やドラッグに走る傾向が高いという調査結果も報告されています。また友人が多い人は心臓発作からの回復が早いというのです。

つまり、家族や友人と過ごす時間を増やすことは、精神的なリラックスや健康の増進に繋がり、仕事にも集中できるというわけです。その上、豪華なパーティーや買い物にお金を費やすよりも、居間や食卓でおしゃべりをすることにはお金がかかりません。節約したお金を投資に回すことができるので、さらに合理的です。

欧州の職場は「社員の家族事情」まで考慮する

家族と一緒になって、ペットと遊ぶことは、さらにリラックス効果を増進します。Robert Wood Johnson FoundationとHarvard School of Public Healthの研究によれば、ストレスを抱えたアメリカ人の47%はペットと時間を過ごすことで、ストレスが軽減されたと答えています。

お金持ちは、無意識で、合理的に資産を増やし、健康を増進し、自分の生活を、精神的にも豊かにする行動を選択しているのです。

仕事に追われるサラリーマンは、家族や友人と過ごす時間を軽視しがちですが、それは、体の健康の点から見ても、仕事の効率や創造性の点から見ても、実は間違った選択だということです。ストレスを溜めて体を壊してしまったら、仕事もできませんし、勉強だって不可能です。ストレス解消にお金を使い、そのお金を稼ぐために仕事をするのでは本末転倒です。

欧州の職場は、富裕層のように大変合理的な考え方をします。サラリーマンに、いきなり辞令を出して、家族の事情を考慮せずに転勤を強制することはまずありません。家庭生活がメチャクチャになってしまったら、その人の生産性は下がり、会社にとっても本人にとっても良くないことを知っているからです。転勤を頼むときは、家族の事情も考慮するのが一般的ですし、会社によっては転勤先で、配偶者の仕事まで用意します。

そうした方が、社員の生産性が上がるので、会社にとっても本人にとっても良いことを知っているからです。

また、有給休暇も消化するのが当たり前ですし、子供の学校や、配偶者の誕生日に早退する、というのも当たり前です。これも、家族との関係が良くなった方が、生産性が高まる、という考え方が下地になっています。不安定な時代だからこそ、ワークライフバランスを踏まえて、家族や身近な人との関係を、重要視しなければなりません。