コロナ禍で窮地に追い込まれたホスト

筆者がAさんを取材したのは昨年2月のことである。その後、4月に発出された緊急事態宣言でホストクラブはどうなったのか。ほとんどの店舗は2週間ほどの休業状態を余儀なくされた。その後の5月には、17~22時に営業時間を変更する店、SNSでの宣伝は一切行わず、初回の客を禁止して売り上げを上げる店など、さまざまな対策がみられた。

Aさんの働くホストクラブも例外ではなく、2週間営業停止となった。その間の日給保証は支払われず、7000円×12日(営業日は週6日)の8万4000円相当の給与がもらえないという計算だ。Aさんは当時、「副業を始めようか本気で悩む」「腎臓1つ売ってこようと思います。冗談です(笑)」とこぼしていた。

そして2021年3月現在、Aさんの名前はホストクラブのHPに存在しない。

営業用のLINEは連絡がとれなくなっており、ツイッターのアカウントは消えていた。彼が街にいた痕跡はどこにもない。

Aさんとは今も連絡がとれない。もしこの記事を見たら、筆者か編集部まで連絡してほしい。

居場所をなくした元ホストは「職歴なし学歴なし一文無し」

ホストは一見きらびやかな世界に見えて、その実、売り上げ至上主義の弱肉強食の世界だ。

「簡単に稼げる」時代はもう存在しない。ローランドによるホストブーム、SNSやYouTubeによるブランディング合戦。それに加えて基礎となる店内での接客。寮の提供やまかないの完備があるため、辛うじて生きることはできる。その環境が居心地がいいと感じる人もいるだろう。ただし、自分で売り上げを上げない限り永遠に賃金は上がらず、年を重ねるごとに若い新人が入ってきて売れない中年のホストの居場所はなくなっていく。そうして歌舞伎町から去らざるを得なくなる時、職歴なし学歴なし一文無しである可能性は低くはない。

一定期間の目標を定め、見切りをつける時期をきちんと見極めて働く。それが、歌舞伎町という街に若さと労働力だけを搾取されて終わってしまうことを防ぐ有効な手段なのではないだろうか。

深夜の歌舞伎町で弾き語りをするAさんの様子。4カ月続けた結果、路上に集う若者のほとんどと知り合いになったそうだ。
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