「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示される

また、セミナーでは入会数はもちろんのこと「初参加」「新規友人数」「プロジェクト参加(プロジェクトについては後述)」といった形で行う表彰が毎回行われる。表彰の基準は厳しくないため、真面目に活動していればかなりの割合で表彰されるが、これにちょっとした高揚感があるそうだ。

セミナーではオーバーリアクションが推奨されており、表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ。

この他にも師匠の話を聞く『師匠の部屋』や、師匠がさらに上位の幹部に質問する『東京カリスマ』など、幹部とのコミュニケーションが取れるセミナーもあるという。また、脱会者のDさんがもっとも記憶に残っていると語ったのが、「自己投資」と呼ばれる毎月15万円の上納金を達成していると参加できる限定セミナーだ。

このセミナーは上納金を支払っているだけで「自己投資を達成した」ということで表彰される。活動の成果ではなく、単にお金を払っているだけで表彰されることに衝撃を受けたという。

「環境」では毎週末のセミナーを通じてある種の勧誘マニュアルを教え込んでいるが、それは同時に承認の場にもなっている。数百人の前で熱烈に承認される場を普段から得られている人は稀であり、頻繁に承認儀礼を行うことで所属の動機付けをしていると考えられる。

そして、この動機付けとして団体内で強く機能しているのが「全体会議」だ。

有名芸能人も多く参加する「全体会議」

「全体会議」というのは毎月行われる「環境」全体のセミナーで、月初か月末の土日で開催される。例年は関東か関西のコンベンションセンターで開催されていたが、数千人が集まるイベントということもあって昨年の緊急事態宣言でいったん中断された。

だが、宣言解除後に復活し、今年の緊急事態宣言発令後も行われているようだ。内容としてはセミナーや表彰のほか、ゲストを招いてのインタビューや余興など、さまざまなプログラムが用意されている。また、テレビでよく見る芸能人もトークショーなどに参加していたという。

写真=筆者提供
全体会議の様子。会場は幕張メッセで参加人数は3000名程度だという

筆者が確認したゲスト一覧には、テレビにもよく出演している辛口で有名な女性芸能人や若手お笑い芸人など、芸能人が数多く含まれていた。「有名芸能人がゲストとして来ているのを見ると、すごい団体に入会したような気持ちになった」とDさんが語っており、この芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。

芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っているという。なお、現在でもフロント団体のホームページには、全体会議のゲストも含めた芸能人へのインタビュー記事が掲載されている。

また、初回参加の場合は、それだけで紹介者も含め会場の座席を前方に設定される。前方に座れるのは成果を出している人で、団体内では名誉なことだとされている。

さらに、新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わうという。このように新規参加者に充実感を与える仕組みを作っているのだ。