数百人規模の虐殺が起こるのか

これまで沈黙していた国連安保理は10日、ミャンマーの治安部隊が市民の抗議デモに発砲し死傷者が増え続けていることについて非難する議長声明を発表。しかし、軍によるクーデターへの言及は中国、ロシア、インドなどの反対により文書には盛り込まれなかった。そのため、国軍を「政権」から引きずりおろし、民主化へのプロセスへ導くための実効性は乏しいとの見方が強い。

国軍の蛮行がエスカレートする中、市民の間では今後、数百人規模の虐殺が起こるという見方が強まっている。目下、国軍による民衆の掃討に出るといった事前警告はない。しかし、国軍や政府寄り関係者の家族はヤンゴンを捨てて、続々と内陸にある首都ネピドーに向けて一斉に逃げ出している。

ミャンマーへの投資が多いシンガポール政府は「ミャンマーからの退避を推奨する」と在住者へ呼びかけを始めた。

写真提供=新町智哉
大きく破損した新町さん宅の窓ガラス

催涙弾の被害に遭った新町さんは「かつて、軍が民衆を大弾圧した1988年や2007年の混乱を経験した人々による直感だからたぶん正しい」と指摘し、実際に「ミャンマー人の知人から、○○方面に逃げた方が良いというアドバイスも受けるようになった」と緊迫した状況であることをうかがわせる。

日本政府のちぐはぐなミャンマー対応

一方(残念なことに)、ミャンマーにある日本大使館の動きは相変わらず重い。クーデター勃発後、ミャンマーから日本への直行便の運行は2回しかない。3月は1本だけ、4月には数便予定されているが、これらの座席は全て埋まっているという。

現在、ヤンゴンに残っている日本人は1000人程度とみられる。残留するにしても帰国するにしても、当分は精神的に厳しい状況におかれそうだ。

日本の外務省が告知する「海外安全情報」によると、ミャンマーはコロナ対策では退避勧告に当たる「レベル3(退避してください。渡航は止めてください)」となっている。だが、安全対策では一部地域を除いて「レベル2(不要不急の渡航は止めてください)」にとどまっている。

在ミャンマー日本大使館は3月15日、ヤンゴン市内での戒厳令発布を知らせる注意を促す文章の中で、「当局による制圧のための動きについては、場所も時間も予断を許さず、また、昨日の死亡事案の増加が示すように、一層厳しくなっている」と説明した。

ただ、「今後事態が急変する可能性があることを念頭に置き、当地にて急を要する用務等がない場合には、商用便による帰国の是非を検討されることを勧める」と述べており、政府としては救援機を投入する考えがないことを匂わせている。