日本は世界でもっとも高齢者人口が多いということは、新型コロナ以前から世界的に知られています。イギリスでも、ニュースやドキュメンタリー番組が高齢化問題を取り上げるときには必ず日本が事例として取り上げられます。

それだけ高齢者が多いのにもかかわらず、今回の新型コロナの死者数は桁違いに少なく、かつてのように経済も上向きではないなかで、自粛による経済打撃もかなり小さく抑えている。イギリスや欧州では日本のそんなところに驚いている人たちが多いのです。

JAL、ANAの対応に見る「情」

他の先進国と違って、日本では企業による大規模解雇も行われていません。イギリスやアメリカは外出禁止令が発令された前後に大規模な解雇を行った企業が多く、街は失業者だらけです。

十分な体力があるはずの大企業に勤務していた私の知人にも解雇になった人がいます。養うべき家族がいるなど、一切状況は考慮してもらえません。欧州やアメリカの大企業は日本と違い、実にドライで利益重視型です。

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イギリスをはじめとする欧州やアメリカの航空会社は、新型コロナ危機の直後、従業員を数万人単位で解雇しました。パイロットや整備士もバッサリです。ひどい会社では、半数以上の従業員が解雇されました。

ところが日本の場合、2020年夏の時点ではJALもANAも従業員を解雇せず、ANAでは防護服を製造する仕事にクルーをあてがいました。この話題は欧州でも報道され、「なんと情があって、柔軟な対応なんだ!」と驚かれました。

いま、「従業員を守る」という日本式の経営が評価されています。日本に比べて転職のハードルが低く、雇用流動性がある欧州でも、やはり解雇はショックです。多くの人は住宅ローンやカードローンなどの借金だらけのなか、なんとか生活を切り盛りしていますし、貯蓄率も低いため、一旦解雇になったら生活が成り立ちません。イギリスだと失業手当は雀の涙で、中年以上だと次の仕事も簡単には見つかりません。

欧州で報道された「国民一律10万円」のニュース

日本では、イギリス政府が打ち出した「雇用されている人に対して最大で月2500ポンド(1ポンド135円として約33万7500円)までの賃金を保障する」という対策が話題になりましたが、実際はその人が「雇用中」であり、「一時解雇になった」という証明がなければ保障してもらえません。それを知ったうえで一時解雇にした企業もたくさんあります。さらに、解雇は一時的であったとしても、その後ふたたび雇用されるという保証もありません。

また、自営業なら経費を除いた年収が5万ポンド(約675万円)を超えれば、まったく保障をしてもらえません。だから企業から解雇をされず、一定の基準を満たした自営業者やフリーランスにも保障が与えられる日本の温情措置をうらやましく思うイギリス人が多いのです。

赤ん坊から受刑者、認知症のお年寄り、さらに日本に住んでいる外国人にまで、資産や収入の審査もせず、一律で10万円を配った国は日本だけです。他の国は収入が減少したことの証明審査や納税実績など、さまざまな制限を設けています。

ちなみに「国民一律10万円」のニュースは欧州でも報道されており、イギリス人で大学教員をしている私の家人や、友人たちは毎日「10万円! 10万円! ミスターアベはナイスガイ! 私は日本に移住したい!」と言っています。