なぜ余震域でないところで地震が起きるのか

こうした内陸型の直下型地震は、時間をおいて突発的に起きます。太平洋プレートと北米プレートの境界で起きる余震とはまったく別個に、内陸の広範囲でM6~7クラスの地震が散発的に誘発されるのです。その結果、東北地方、関東地方、中部地方の東部では、これからも最大震度6弱程度に至る揺れが予想されます。

では、なぜ余震域でないところで地震が起きてしまうのでしょう。こうした内陸性の直下型地震は、東日本の岩盤が東西方向に伸張したことによって起きたものです(図表2)。

地面が引っ張られたことで陥没する「正断層型」の地震が、「3.11」以降に突然発生し始めたのです。なお正断層型と逆断層型の地震については、あとでくわしく述べましょう。

これらは今後も時間をおいて突発的に起きる可能性があります。すなわち、太平洋上のM9の震源域で起きる余震だけではなく、東日本の内陸の広範囲でM6~7クラスの地震が「誘発」される恐れがあるというわけです。

ここでちょっと整理をしておきましょう。地震には大きく分けて、「海で起こる地震」と「陸で起こる地震」の2つがあります。

第1のタイプは太平洋岸の海底で起きる地震で、莫大ばくだいなエネルギーを解放する巨大地震です。陸のプレートと海のプレートの境にある深くえぐれた海溝かいこうで起きるため、「海溝型地震」とも呼ばれます。このタイプは、M8~9クラスの地震を発生させると予想されています。また、海で起こる地震は、東日本大震災のように津波が伴います。

激甚災害「首都直下型地震」の可能性

もう1つのタイプの陸で起こる地震は、文字どおり足もとの直下で発生します。新聞やテレビなどでは「直下型」や「内陸型」などさまざまな表現がありますが、震源地が内陸であると考えれば十分です。

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この地震はその後に頻発している新潟県中越沖地震や岩手・宮城内陸地震、さらに熊本地震、大阪北部地震、北海道胆振いぶり東部地震のような地震で、1995年に阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震もその1つです。これはM7クラスの地震であり、主に活断層が繰り返し動くことで発生します。

こうした直下型地震は震源が比較的近く、かつ浅いところで起きたという特徴があります。また震源地が人が住んでいるところと近いため、発生直後から大きな揺れが襲ってくるので、逃げる暇がほとんどありません。特に、阪神・淡路大震災のように、大都市の近くで短周期地震動をメインとする地震が発生すると、建造物の倒壊など人命を奪う大災害をもたらす非常に厄介な地震です。

いかに巨大なエネルギーを解放する地震でも、そこに人が住んでいなければ、あるいは壊れてくるものがなければ、被害は最小限に抑えられます。しかし、それほど大した地震でなくても、ビルが密集し、また空き地がほとんどない都市では、その被害は甚大なものとなってしまうのです。

実は、誘発地震の直撃する地域の中でも最も心配な場所が、東京を含む首都圏です。首都圏も東北地方と同じ北米プレート上にあるため、活発化した内陸型地震が起こる可能性が十分にあります。ここでM7クラスの直下型地震が突然発生することが、最大の懸念となっています。