日本で地震の起こらない場所はない

かつてこの地域では大被害があったことが記録に残っています。1855年に東京湾北部で安政江戸地震(M6.9)が発生し、4000人を超える死者が出ました。また最近では、2005年7月にM6の直下型地震が発生し、首都東部が震度5強の強い揺れに見舞われ、電車が5時間以上もストップしました。

国の中央防災会議は、首都圏でM7.3の直下型地震が起こった場合の被害を予測しています。1万1000人の死者、全壊および焼失家屋61万棟、95兆円の経済被害が出ると想定しているのです。東日本大震災によって事実上、東日本の内陸部では首都圏も含めて直下型地震が起きる確率が高まった、と考えたほうがよいでしょう。

日本はどの場所も地震から逃れられないことが、いまだに常識となっていません。それを物語るように、私が講演会で地震について話をすると、「地震が来ないところを教えてください」と皆さんが聞いてきます。本当に、日本には安全を約束できる場所はまったくないのです。

たとえば、日本列島には「活断層」が全部で2000本以上もあります。これらはいずれも何回も繰り返して動き、そのたびに地震が発生します。一方、その周期は千年から1万年に1回くらいであり、人間の暮らす尺度と比べると非常に長いのです。

日本列島のどこかで巨大な力が解放されて地震が起きますが、そのどこかは日本の全国土と考えて差し支えありません。

日本列島に存在する活断層は2000本以上

地球上では、断層が1回だけ動いて、あとは全然動かないということはありえないのです。1回動く断層は何千回も動くものであり、これが地球のおきてです。つまり活断層が見つかったら、そこで過去に何千回も地震が起きていたことを示しているのです。

これまで非常によく動いてきた断層は、これからも頻繁に動く可能性があります。他方、それほど動かなかった断層は、今後もあまり活発には動きません。こうした特徴を個々の断層ごとに研究者は調査します。

国の地震調査委員会は、日本列島に2000本以上存在する活断層の中でも、特に大きな地震災害を引き起こしてきた114本ほどの活断層の動きを注視してきました。

東日本大震災は、東日本が乗っている北米プレート上の地盤のひずみ状態を変えてしまいました。そのために地震発生の形態がまったく変わった、と考える地震学者も少なからずいます。

実際、地震のあとに日本列島は5.3メートルも東側へ移動してしまいました。また太平洋岸に面する地域には地盤が1.6メートルも沈降したところがあるのです。巨視的に、見ると、東北地方全体が東西方向に伸張し、一部が沈降したと言えます(図表2)。つまり、陸地が海側に引っ張られてしまったのですが、これは海の巨大地震が起きたあとに必ず見られる現象です。